2008年06月05日

Acrobat 9 公開の真実(1)─失われたStandard版

 Acrobat 9 Proがアナウンスされた。当初の予定より早く、アドビストアでは6月末には発売されるという。前回のバージョンが2006年の11月なので、1年半強でのバージョンアップということになる。
 バージョンアップの大きな部分はビジネス用の機能であり、ビジネスユースでのプラットフォームを目指すAcrobatが、PDF以外のファイルフォーマットを取り込み

PDFポートフォリオ

という機能を搭載したのは順当だといえそうだ。
 PDFポートフォリオは、Acrobat 8にあったPDFの結合機能を進展させてPDF以外のファイルも1つのパッケージに収録するものである。PDFだけでなく、WordExcelPowerPointなどのファイルも同梱できる。InDesignやIllustratorも可能だ。PDF化する前の元データだけでなく、参考資料としてのデータも含めることができる。
 おそらく、ビジネスユーザーからヒアリングでPDF以外のファイルもパッケージ化したいという要望が多かったに違いない。当然ながら、PDFポートフォリオで同梱したPDF以外のファイルを開くためには、オリジナルのアプリケーションが必要である。
 PDFポートフォリオが対応しているのはAcrobat 9 Pro(Professionalとはいわず、Proと表記するようになったようだ)以降である。以降というのは、いままでのAcrobat 3D Version 8を含めた機能強化した

Acrobat 9 Pro Extended

という上位バージョンが登場したからである。この「Acrobat 9 Pro Extended」と「Acrobat 9 Standard」は、Windows版のみになった。つまり、MacintoshのStandard版は消失したのである。
 Pro版にあってStandard版にない機能は

PDFファイルの最適化
PDFポートフォリオ
PDFレビュー権限
PDF/Xなどの作成


などとなっている。Standard版にある主な機能は、フォームの作成と収集セキュリティPDFの結合などである。印刷関係で使う場合は、Standard版はほとんど不要といってよい。Pro Extended版は、3Dデータを扱いたいときには便利だろう。
 また、レビュー機能をさらに推し進めて、PDFをネットワーク上で共有できる仕組みが

Acrobat.com


である。現在のところベータ版だが、PDFを「Acrobat.com」にアップロードして複数のメンバーで共有して、編集したり注釈を追加したりできるようである。説明会ではこの機能を「リアルタイムコラボレーション」と呼んでいたように記憶している。Adobeが提供する無償のサーバを利用し、共有できるのは3名までのようだ。

080605-01.gif

 Adobeが力を入れていた機能は、フォーム機能である。Web上のCGIなどを使った機能と同じように、PDFのフォームでもデータの送信が可能だ。プレス用の説明会の申込みも、フォームで申し込むようになっていたくらいである。フォームフィールドを自動的に認識する機能や、フォームの集計機能も強化されている。
 できれば、ネット上の受注にも使えるように、フォーム内容を自動返信したり、自動的に計算したりする機能があればもっと面白い(ひょっとすると既にある?)が、いまのところ、「アンケートに使いましょう」程度のようである。
 さて、欧米では浸透しているAcrobatだが、日本での普及どうだろうか。新しいバージョンへのシフトだけでなく、Acrobat自体のさらなる普及が進むかどうかについては、新しい機能を追加する以外の施策が必要かも知れない。
(ショットはAdobe Acrobat 9 Pro Pre-Releaseより)

ラベル:Acrobat 9 Pro
posted by 上高地 仁 at 16:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | Acrobat 9 公開の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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