フィックスアップでは、デバイスカラーとキャリブレーションカラー、そしてLabカラー、特色を別々に指定できる。デバイスとキャリブレーションは、RGB、CMYK、グレーも選択することができる。オブジェクトは
非可逆圧縮した画像
非可逆圧縮していない画像
ラインアート
テキスト
スムーズシェード
を使い分けることができるのである。まあ、カラー変換するといっても、デバイスCMYKやデバイスグレーではないカラーを、印刷用のCMYKに変換するのが目的なので、この機能を使いこなす機会はあまりないかもしれない。しかし、面白い使い方ができるかも知れない。
変換設定パネルでは、設定を追加して複数の変換を同時にできるようになっている。この場合は、普通に考えると、最初に設定したものを先に行うことになると考えられるが、本当にそうなのだろうか。
それでは実際に試してみよう。まずIllustratorで、RGBで「R255」のオブジェクトを2つ作成した。さらに、それをCMYKに変換したものを2つ作成した。RGBとCMYK(「Adobe RGB」から「Japan Color 2001 Coated」に変換したもの)のオブジェクトの片方に「sRGB IEC61966-2.1」と「Japan Color 2002 Newspaper」のプロファイルを埋め込んだPDFを用意したのである。PDF内にデバイスRGBとデバイスCMYK、キャリブレーションRGBとキャリブレーションCMYK両方のオブジェクトがあるわけだ。
変換設定を2つ作成する。いずれも[カラー]で「すべてのカラー(特色を除く)」を選択する。そして[変換]で
最初に、変換先に変換
次に、キャリブレーションを解除
するとどうなるだろうか。先に変換先に変換するので、キャリブレーションRGBは、想定RGBではなくキャリブレーションRGBかに変換先に変換される。埋め込まれたRGBと想定プロファイルのRGBが異なっていると、同じカラーでも変換したCMYK値は異なってしまうのだ。つまり、後に設定した「キャリブレーションを解除」は無視されている。
同じように、CMYKにもICCプロファイルを埋め込むと、想定CMYKと埋め込みCMYKプロファイルが異なっていると結果が変わってくる。デバイスカラー値は変換されないが、ICC埋め込みオブジェクトはカラーマネージメントされて、CMYK値が変換されるのだ。
「変換先に変換」して「キャリブレーションを解除」
↓
↓
さて、問題は変換設定の順序が逆の場合だ。
最初に、キャリブレーションを解除
次に、変換先に変換
したときである。もし最初の変換を行った後、その次の変換を適用するとしたら、PDF内に埋め込まれたICCプロファイルを先に解除し、その後、キャリブレーションを解除してデバイスカラーに変換した後、想定プロファイルで割り当てて変換先に変換するのだろうか。
残念ながら、この設定ではRGBはキャリブレーションの解除しかされない。キャリブレーションRGBは、デバイスRGBになり、RGBのままなのである。「変換先に変換」の設定は無視されるのだ。ということは、変換設定では複数の色を置換設定が作成できるのに、最初の1つめしか有効にならないのだろうか。おそらくそんなことはないだろう。複数の設定が可能なのは、複数の設定を行っても、それぞれでカラーの変換は可能なのである。なぜなら、デバイスRGBはCMYKにカラー変換されているからである。
キャリブレーションRGBは変換されない
↓
どうやら、このあたりに変換設定の仕組みの秘密が隠されているようである。その秘密を把握できれば、[色を置換]フィックスアップの[変換設定]を使いこなすことができるに違いない。[色を置換]フィックスアップは、なかなか置くが深いのであった。
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