さて、PAGEの今年のテーマは
タテ串からヨコ串に
となっている。印刷会社にとっては、縦から横にといっても、横にしたときの具がないのではないか。具がなければヨコ串にはできないと思うがどうだろう。横に串刺しできる具がない会社は先行きが危ういのかも知れない。いずれにしても、印刷機を回すだけで飯を食っていける会社はますます少なくなりそうである。
PAGE 2008で惹起したいテーマがあるのかというと、なかなか思いつかないが、せっかくなので、テーマを絞って話を伺うことにした。注目したテーマというのは、
PDF検版ソフト
である。ブースを回って話を聞いた製品は、3つである。ひょっとしたら、見落とし製品があったかも知れないが、その場合はご容赦願いたい。見つけた3つとは
IMステーションGXL/Mac
Proof Checker Pro ver.1
JustPDFChecker
である。
「IMステーションGXL/Mac」はプロスパークリエイティブが販売している検版ソフトだ。PDFとTIFFを検版対象とする。「GXL」というのはLite版でこちらはMacintosh版しかないが、「IMステーションGX」には、Macintosh版とWindows版がある。これはバッチ処理用の複数のフォルダを使い分けて検版する。
「Proof Checker Pro ver.1」はTooが販売している検版ソフトである。こちらはPDFを検版対象とする。AcrobatやPitStopで編集したPDFなどを比較するのに便利なソフトだ。編集前のPDFと編集後のPDFを「ファイル結合」というフォルダに入れるだけでプルーフチェックを行う。
最後の「JustPDFChecker」は、TIFF、JPEG、BMPに対応した「JustChecker」にPDFとEPSを対応した検版ソフトである。はっきりしているのは、この3つの中でもっとも高価なことだ。面付けしていても、面付け前のオリジナルデータと比較してチェックすることが可能になっている。
残念ながら、話をお聞きしたのがだいぶ前なので、それぞれのソフトの詳細な使い方や機能は忘れてしまったが、これらの検版ソフトを使う上で、注意したいポイントを考えてみよう。
まず、比較対象とするデータ形式である。PDFで検版するといっても、PDFをそのまま比較しているとは限らない。PDFを画像に変換したり、PostScriptファイル化して比較しているかも知れない。PDFのネイティブコマンドで比較している場合は、テキストをアウトライン化してしてしまった場合は、比較するとかならずチェックされてしまう。
チェックする品質も重要だ。微細な相違も、どんなものでもリストすればいいわけではない。ほんのわずかな違いであれば、リストしないように設定をカスタマイズできることも重要だ。比較時のオプション設定が詳細にわたり細かく設定できるほうがいい。
Acrobat 8 Proでも、アドバンズドメニューに比較コマンドはあるが、詳細な設定ができない。「標準」で比較しても、必要以上に相違部分がリストされてしまうからだ。また、ページサイズが異なっていると比較できない。したがって、検版の数をこなすのであれば、Acrobatの内部機能は向いていない。
また検版するときに重要なのは、どのデータとどのデータを比較するのかということである。製作部門が校正前のデータと、校正して修正したデータを比較することもあるが、入稿したデータと出力前のデータを比較するのが基本だろう。どちらに重点を置くのかで、選択する検版ソフトは変わってくる。
校正時のチェックに使うのであれば、PDFのネイティブデータで比較するほうがいいだろう。しかし、入稿したデータを、AcrobatやPitStop、もしくはRIPの内部機能で変換したデータの場合は、画像化したデータで比較するほうがいいに違いない。
いずれも価格的には高価である。デザイン事務所が校正のチェックカーとして導入するには敷居が低いとはいえない。印刷会社が社内の出力ワークフローに組み込んで使う代物である。
したがって、出力ワークフローに組み込んで、バッチ処理が必要になるのではないだろうか。入稿データと出力前のデータを比較して、エラーがなければそのまま出力し、エラーがあったら、出力をストップできるようにしなければならないのではないか。
ここで、どのソフトが優れているとはいわない。実際に使ったわけではないので、判断はできないからだ。
ただ、もしあなたがこういう検版ソフトを導入するのであれば、比較するデータ形式、比較オプション、バッチ処理などについて留意して判断して欲しい。それぞれのソフトの長所短所を見極めて、使っていただくしかないのである。
Acrobat 8 Proを使うにしても、PitStopを使うにしても、RIPの内部機能で変換するにしても、入稿したPDFをそのまま出力できるという保証はない。フィックスアップすると、予想外の結果になることもあるからだ。RGBをCMYKに変換するだけでも、想定外のデータに変換されることもある。入稿から出力までの間に、オブジェクトが消失したり、カラーが極端に変わってしまうデータは、デジタル検版して自動的に調べる仕組みは不可欠である。
PDFで入稿したデータは、プリフライトやフィックスアップを行ったあと、自動検版して出力するのがあたりまえになるのは、それほど遠いことではなさそうである。
関連リンク |
IMステーションGXL/Mac www.prosper-c.co.jp |
Proof Checker PRO(プルーフチェッカープロ) www.too.com |
自動比較ソフト JustPDFChecker fuso.jp |
ラベル:PDF
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