アスピリンという薬の名前はよく聞きますが、実際に「どんな薬?」と聞かれても、よくわからないということで、本書を読んでみました。なるほど、『超薬アスピリン』を読むと、アスピリンがいかに優れた薬なのかが詳しく解説されています。
分類するとアスピリンは「非ステロイド性抗炎症薬」と呼ばれる薬のハシリです。薬として使われるようになってから、もう百年も立つという古株です。「抗炎症薬」というのは、要するに痛み止めです。患部の一部が傷ついたりすると、患部を修復したり免疫機能が働いたりするので、炎症が発生します。発熱したり痛みが生じたりするのです。その痛みを止めるものが抗炎症薬です。ステロイド、つまり副腎皮質ホルモンを使った抗炎症薬は、副作用がきついので、それと峻別するために、あえて「非ステロイド性」として分類しています。
僕はあまり痛み止めの薬を貰うことはありませんが、虫歯の手術をしたときは、「ロキソニン」を飲んでいました。ロキソニンも、アスピリンと同じような「非ステロイド性抗炎症薬」の一つです。アスピリンなどの「非ステロイド性抗炎症薬」が痛みを抑える(鎮痛)のは、炎症したときに分泌されるプロスタグランジンを阻害するためです。
それで、アスピリンとロキソニンでは何が違うのかというと、薬価が全く異なります。アスピリン1錠の薬価は6円40銭ですが、ロキソニンの薬価は112円20銭だそうです。しかも、アスピリンは「バファリン」とか「バイアスピリン」などという商品名で、普通のドラッグストアでも買うことができます。
さらに、アスピリンが優れているのは、鎮痛作用だけでなく、梗塞や血栓で起こる病気にも効きます。これは、アスピリンが血液中の血小板が凝固する性質を阻害するため、体内で血液が固まって血管を塞いだり破裂させることが少なくなるからです。血栓ができやすくなったら、少量のアスピリンを飲んでおくと予防にもなるようです。
またアスピリンは、がんやアルツハイマーにも効くらしいということがあります。こちらの方は、まだまだ認知されていないようですが、アスピリンを飲んでいると、大腸がんなどで新しいポリープが発生しないという実験結果もあるようです。アルツハイマーも、定期的に摂取していると発生率が六分の一という研究結果もあるようです。
若いうちは不要でしょうが、年をとって血液の循環が鈍くなると、定期的に少量のアスピリンを飲むのは予防的にはいいのかもしれません。
もっともそうはいっても、副作用もあります。「非ステロイド性抗炎症薬」全般に言えることですが、胃腸障害を起こしやすいようです。たいてい「非ステロイド性抗炎症薬」を処方されるとき、胃薬も合わせて貰うのはそのためです。ですから、アスピリンが合うかあわないのかは、体質もあるのでしょう。本書では他にも副作用の実例が書かれています。体内でさまざまに働くプロスタグランジンを阻害すると、いろいろと副作用がありそうですが、一般的には摂取量が少なければ、抗血小板薬としては、副作用は小さいようです。アメリカではアスピリンの副作用報告が多いようですが、たいていは摂取過剰が原因のようです。
安価で消炎以外の効果があるアスピリンは、うまく使えば、たしかに「超薬」なのかもしれません。本書は、アスピリンだけでなく、痛み止めとして処方される「非ステロイド性抗炎症薬」の仕組みを知る上で、わかりやすい本でした。少しトゲの多いが玉に瑕ですけどね。
なお、この本に書かれている205円ルールは今はなくなりました。
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