2007年04月16日

混乱の真犯人は誰だその5 ユニコードは字形を追加するためにあるのだ

 最初に文字コードが議論されたときは、文字コードの数に制限があった。だから、字体を「包摂」して、字体数をシェイプアップするしかなかった。もし、最初から無限で文字コードが利用可能であれば、包摂などといわずに、字形をすべて採用したのではないか。もしそうだとすれば、JISの包摂主義は、ただの「方便」でしかない。

 JIS90で追加された2つの文字をご存じだろうか。「凜」と「熙」の2文字だ 「凜」はともかく、「熙」は「煕(区点63.70)」に異体字があり、読みも同じである。何かの理由があって採用したのだろうが、あえて追加する必要は感じられない。

 つまり、JISはそのときの状況に合わせて、採用する文字を適宜変更しているわけである。「凜」は「熙」は包摂されてしかるべき異体字ではないだろうか。必要があれば、包摂する基準はシフトするのである。

 私が思うのは、それは「正しい」ということだ。時代に合わせて、採用する文字は変えていけばいいのだ。なぜそれがいけない。既存の文字コードとの整合性を考慮しつつ、必要な字形は追加していけばいいのではないか。

 ただ、今回ミスったと思うのは、JISコード上で「例示字形」を変更するだけでなく、連動してユニコードの字形も差し替えてしまったことだろう。もちろん、そうしないと、印刷標準字形を差し替えた意味がないのはわかるが、ユニコードの字形を変えてしまったら、1つのユニコードに複数の字形を割り当てることになり、Vistaのよううな問題が起こることは予見できたに違いない。まあ、おそらくはそれを見越しても、変更せざるを得ない「事情」があったのかもしれない。

 しかし、変更した字形についてはJISコードのみを変更し、新規字形はすべて新しくユニコードポイントを割り当てれば、何一つ問題にはならなかったはずである。にもかかわらず、その選択肢は廃棄されたわけである。私はその時点は、JIS 2004は

空想の産物

化したと思っていた。それが採用されることはないだろうと、思っていたのである。

 一体全体、ユニコードがサロゲートペア領域を拡張して、百万字も文字を利用できるようにしたのは何のためなのか。包摂された「異体字」や既製事実化した「字形」を登録するためではないのか。諸橋大漢和や康煕辞典の文字に全部に文字コードを振りたいというような要望があるからではないのか。つまり、限りなく湧いてくる「字形」を、コンピュータ上で利用するためではないか。

 ちまたでよく言う「文字が足らない」は、実は「字体」が足らないのではなく、「字形」が足らないのである。もちろん足りないといわれる字形には、不要なものも多くある。第二水準以下の字形の大半は、一生使うことはない字形である。「盜」などの人名にも使われていない字形は、削除してもなんら差し障りがない。

 JISの包摂主義と同じように、ユニコードも包摂主義だとという意見もあるようだが、ユニコードは包摂主義ではない。そうではなく

ユニコードは無政府主義


である。つまり、ユニコードは字体や字形についての基準をなにも持たない規格なのである。明確な基準を持たず、言われるままにコードだけを提供する。今回の件で、ユニコードは単にJIS依存主義であることが明確になったわけである(そういう意味では、ユニコードも包摂主義であるというのは正しいが、JISは本当の意味では包摂主義ではない)。

 文字をほぼ無限に追加できるユニコードに包摂主義を持ち込むのは、はっきりいって

ナンセンス


である。


posted by 上高地 仁 at 21:06 | Comment(2) | TrackBack(0) | Vistaフォント、混乱の真犯人は誰だ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「失楽園」の連載開始は1995年9月1日なので、それと人名用漢字やJIS X 0208の1990年改正を結びつけるのは、かなり変な気がするんですけど? そもそも「凛」が「凜」を包摂してるなんてこと、JISの制定過程から言って、ありえませんし。
Posted by 安岡孝一 at 2007年04月24日 13:41
 ご指摘ありがとうございました。私の記憶違いかもしれません。調べてみると、細川首相の就任も1993年でした。また調べてみて、ソースがわかれば、訂正しておきます。いまのところ確認できなかったので、該当する記述は削除しておきます。「凛」が「凜」が包摂関係というのは言い過ぎかも知れませんが、「JIS漢字辞典」では参照字形として掲載されています。
Posted by jin-k at 2007年05月01日 11:41
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