2014年01月29日

Illustratorでプリント時にアートボード外トリムマークを簡単に出力する方法

 Illustratorは最近はほとんどCS6を使っている。CCで追加された機能はいくつもあるが、CCの新機能は埋め込み画像の解除、パッケージ書き出し、リンクパネルの強化くらいしかないので、それらは十分条件でしかない。埋め込み画像は「解除」ではなく書き出しで、パッケージ化はInDesignならともかく、単ページではあれば便利という程度だろう。古いバージョンのファイルを新しいバージョンで開くのは簡単だが、CCで作成したものをCS6で開くのは避けたい所。当面はCS6メインになりそう。WindowsではCCはXPに対応していないので、CS6が当分のデファクトになりそうだ。

  主にCS6に的を絞ってIllustratorの基本的な機能を整理している。印刷用データを作成するために最低限知っておきたいノウハウをできるだけ簡潔に解説したいと思っている。トラブルを招かないデータの作成方法、カラーマネージメントも含めた画像ファイルの扱い、印刷用ファイルの書き出しを取り上げる。

 Illustratorデータを書き出す時、EPSで保存する場合とPDFで保存する場合がある。いまどきどちらで作成してもまず問題ない。印刷会社によってはPDFでもフォントはアウトライン化するようになっているが、基本的にはフォントは埋め込んで出力可能だ。ただし埋め込み許可されたフォントであっても、インターネットからダウンロードされたようなフリーフォントは動作が保証されないので、アウトライン化しておく方が無難ということはあるだろう。

 IllustratorではEPSで入稿する場合とPDFで入稿する場合では、一般的にデータの作成方法が異なる。EPSでは仕上がりサイズより一つ大きい用紙サイズを使い、トリムマークを指定するというものだ。PDFではアートボードサイズを仕上がりサイズにすると、PDF書き出し時にトンボを自動的に追加できる。どちらのフォーマットの書き出しに対応したい場合は、仕上がりサイズより大きなアートボードを使う。

 ところがこの方法にはデメリットがある。というのは、トリムマークはデータ上の仕上がりサイズを指定していない。単に視認するためのオブジェクトに過ぎない。たいていはトリムマークはデータ上の境界線として認識されて、面付けソフトに貼り込まれる。つまりトリムマークの外にオブジェクトがはみ出すと、印刷データの境界線としての役目を果たさなくなるのである。EPSは開いて修正できるが、PDFでの修正はやっかいだ。PDFでは用紙サイズは大きくしない方がよい。

 仕上がりサイズの外のオブジェクトを認識させないようにするには、アートボードサイズで作成すればよい。アートボード外のオブジェクトは裁ち落としで拡張した部分を除き、出力データからはオミットされる。これはEPSで書き出しても同じで、アートボード外のオブジェクトはEPSでも反映されない。PDFだけでなくEPSでも、仕上がりサイズで書き出すことは可能だ。

 ただし仕上がりサイズをアートボードサイズにした場合は、プリントアウトしたときに、プリントされるのは仕上がりサイズ(裁ち落としサイズ)の領域のみとなる。つまりトンボが出力されないのである。

 従来、作成したデータのプリントアウトはトンボを付けて出力する。裁ち落としを確認するためで、さらにトンボをカットして仕上がりを確認する。そのためにはトンボの出力は不可欠なのである。ページ物の場合とともかく、Illustratorで単ページドキュメントを作成する場合は、仕上がりサイズより一回り大きな用紙でトンボも出力する。

 Illustratorでドキュメントを作成する時

EPSでもPDFでもアートボードサイズで作成
プリントではトリムマーク付きでプリント


できる方法はあるのか。それを考えると、アートボードサイズは仕上がりサイズで作成するのが一番だろう。仕上がりサイズであれば、裁ち落とし領域を追加してEPSでもPDFでも書き出せる。そのままセンター貼りすればよい。仕上がりサイズはアートボードサイズで、仕上がりサイズにトリムマークを付けておくのである。

 さて仕上がりサイズで作成したIllustratorドキュメントは、トリムマークをプリントアウト時に出力できないのだろうか。実は可能である。ドキュメントをアートボードサイズで作成しておくと、仕上がりサイズに追加したトリムマークを出力できる。出力時のトンボと裁ち落としパネルで[ドキュメントの裁ち落とし設定を使用]をオフにする。そして天地左右の数値を拡張する。トンボが入ればいいので、「15 mm」程度大きくすればよい。こうすると、プリント時にトンボが反映される。

AID1-001.gif

    ↓

AID1-002.gif
*プリントプリセットの右横のアイコンでプリセットしておく。用紙サイズと裁ち落とし幅の設定を保存できる。できればプリント時に用紙サイズまで印刷領域を拡張するオフション設定があると便利だが、そういう気の利いたオプションは用意されていない。

 プリント時のみに裁ち落としを変更するので、EPSで書き出してもドキュメントの裁ち落としサイズで書き出すし、PDFでは裁ち落としサイズを指定できる。EPSで書き出してもPDFで書き出しても、そのまま面付けソフトやInDesignにセンター貼りすればよい。ただしプリント時にトンボと裁ち落としパネルで設定を変更しなければならないので面倒だ。プリントプリセットを作成して対応するのが便利だろう。

 いままでEPSでの入稿はトリムマーク付きが普通だった。EPSでの入稿された場合、ファイルを一旦開いてトリムマーク外のオブジェクトの有無を確認し、オブジェクトがあればデータを修正するしかなかった。しかしアートボードサイズで作成しておくと、トリムマーク外のオブジェクトはEPSでも存在しない。したがってIllustrator EPSは開く必要がない

 とはいえいままでトンボで視認して仕上がりサイズを確認していたので、トンボ無しのEPS入稿が受け入れられるかどうかはわからない。

仕上がりはアートボードサイズ
EPSにもトンボを反映する

場合は、EPSを保存する前に、ファイルメニューから[ドキュメント設定]を開き、ドキュメントの裁ち落としサイズを「15 mm」程度にしておく。そしてEPS保存。そうすると、トリムマーク付きのEPSを書き出すことができる(別途設定が必要)。つまり、ドキュメント設定で指定した裁ち落としサイズでEPSを書き出すことが可能なのである。もちろんセンター貼りOK。出力上はそんな手間はまったく必要ないが、トンボ無しデータ不安症候群のあなたには必要な手順かもしれない。

AID1-003.gif
*オブジェクトがトリムマーク外にはみ出したドキュメント。

    ↓

AID1-004.gif
*裁ち落としを「15 mm」に指定する。EPSで保存する。
    ↓

AID1-005.gif
*InDesignに貼り込んだもの。天地左右15mmずつ多くなったEPSファイルが貼り込まれている。


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http://www.incunabula.co.jp/140207/


 
posted by 上高地 仁 at 11:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | Illustratorトピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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