データ指定を完全グレースケールモードで作成することはPhotoshopでできても、Illustratorではできない。Illustratorではグレースケールモードで指定しても実はそのデータはCMYKのK版が使われているからである。プリントとかではコンポジットグレーで出力するとわからないが、分版して墨版だけを出力すると指定ミスが明らかになる。
IllustratorではCMYKカラーで指定されたものを強制的にグレースケールに変換する機能がある。編集メニューの[カラーを編集]にある「グレースケールに変換」である。ただし配置画像には適用できないし、シンボルも単体で選択するとグレースケール化できない。問題はデータ作成者がすべてグレースケールで作成したつもりでも、一部のデータにCMY成分が残っている場合である。
出力サイドがこうしたCMY成分が残っているデータを入稿した場合、CMYK成分を調べてグレースケールに変換するしかない。グレースケールに変換すれば分版して墨版だけを出力しても出力結果はプリンタのコンポジットグレーとほぼ同じ出力になる。多少の濃度の違いはあっても、CMYオブジェクトが消失することはないからだ。
PDFであればAcrobat Proの[色を置換]でPDFをグレースケールにすることができる。変換先にグレースケールのプロファイルを割り当てて変換すればよい。「Japan Color 2001 Coated」から「Dot Gain 15%」などに変換する。グレースケールプロファイルを割り当てて変換すると、PDF内のオブジェクトのカラーモードはグレースケールに変換されるのである。
↓
*Illustratorの墨版で90%を指定しPDFで保存。「Japan Color 2001 Coated」から「Dot Gain 15%」などに変換に変換すると、グレースケール濃度が保持されない。Illustratorで90%での指定が87%に変換されてしまう。
ただしこの方法では墨の濃度がそのまま保持されない。たとえば、50%濃度は保持されても、80%は「78%」となり、90%は「87%」となる。墨ベタは変換時に強制的にベタにすることは可能だが、濃度にはカーブが適用されて、濃度の浅い所と濃い所は濃度不足になってしまう。「Dot Gain 10%」や「Dot Gain 20%」というプロファイルを適用してもカーブが異なるので濃度にはそのまま保持できないのである。
AcrobatでCMYKの墨版データをグレースケール変換するポイントは
グレーの濃度を保持する
CMYをグレースケールに変換する
ということになる。となると、通常のプロファイル変換ではCMYをグレー変換できてもグレー濃度の保持はできないことになる。となると、変換に使うプロファイルに細工するしかない。
もっともいいのは「Japan Color 2001 Coated」を使って墨の濃度が保持されるように「Japan Color 2001 Coated」のプロファイルをカスタマイズすることだろうか。そうすればCMY部分のLab値は「Japan Color 2001 Coated」の数値が使われる。とはいえそういうカスタマイズは面倒だしコストもかかる。そんなことをしなくても簡単にできないわけではない。変換に使うCMYKプロファイルを作成するのだ。
プロファイルの作成はPhotoshopで可能だ。Photoshopのカラー設定でカスタムCMYKを選択して、ドットゲイン20%でプロファイルを作成する。そのプロファイルをAcrobatで変換元に割り当てるのである。そして「Dot Gain 20%」で変換する。変換元のCMYKプロファイルは環境設定で割り当てる。
*Photoshopの「カスタムCMYK」を選択する。ドットゲイン20%のカスタムCMYKを作成して「CMYKプロファイルとして保存」する。Acrobatで認識される。認識されないときはAcrobatを再起動する。
変換元のCMYKプロファイルはドットゲインが20%で、変換先のグレースケールプロファイルのドットゲインも20%にしておくと、同じ変換カーブで変換するので、グレースケールの濃度は保持されるのである。変換先に「Dot Gain 20%」を割り当てるので、CMYデータは当然グレースケールになる。
*ドットゲイン20%のカスタムCMYKを変換元に適用して、出力プレビューで「Dot Gain 20%」にしたもの。90%はそのままグレースケールの90%として保持される。
CMYKのプロファイルさえ作成できれば、プリフライトでフィックスアップすることもできるので、ドロップレットを作成しておけば簡単に変換できる。EPSで入稿したIllustratorファイルもDistillerでPDFに変換すれば同じように処理できる。
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