コピーが自由になると、著作権が侵害されると考えると人は少なからずいる。DRMフリーになると音楽ビジネスが成り立たないという懸念は拭いきれないようだ。 しかし、一方では、いたちごっこになるコピープロテクト技術には、将来的な不安もあり、楽曲の著作権を保護しつつ、音楽ビジネスが生き残っていく道を模索せざるを得ないのもまた現実である。懸念を抱きつつも、AppleとEMIの取り組みを固唾を呑んで注視するしかないということだろう。
過去の歴史からいうと、プロテクトフリーになったからといって、著作権が一方的に侵害され、ビジネスが成り立たないわけではない。パソコンを巡る問題多くには、プロテクトを巡る議論が絶えなかったからである。
もっとも大きなものは、MicrosoftのBASICだろう。当時は技術的にOSのインストールにプロテクトを施すことは無理(たぶん)だったが、コピーフリーだったため、MicrosoftのBASICは当然のようにコピーされて利用されていた。だから、IBMがパソコンを発売したときに、デファクト・スタンダードになっていた、MicrosoftのBASICを採用したのである。
コピーフリーであったことが、Microsoftを帝国に導いたのである。もし、あのときBASICにインストールプロテクトがあったなら、Microsoftは存在しなかったかもしれないのである。
楽曲の販売において懸念されるのは
DRMなしで音楽ビジネスは成り立つのか
ということであろう。ただ、時代の流れの中で、著作権のプロテクト(DRM)は過渡的なものにすぎない。おそらく、コピーを自由にすることで、楽曲の露出度は高くなり、ビジネスも拡大するからである。DRMフリーは、
音楽ビジネスのWeb2.0的に展開
をもたらす可能性がある。つまり、コピーフリーの楽曲がコピーが、ある意味では草の根的なプロモーションにつながる可能性を孕んであるのである。そうなると、楽曲のPVをYouTubeにアップすることは当然になってくるに違いない。
もちろん音楽ビジネスも変わってくる。ダウンロードで楽曲を配信して、それによって、別の製品やサービスを提供し利益を生む構造に変わってくるに違いない。EMIでも
高音質でDRMフリーの楽曲は、コピー防止機能付きで音質の劣る楽曲よりも
10倍よく売れる
だそうである。となると、ダウンロートできない別バージョンをCDにしたり、有料でコンサートやトーク番組を配信するようなサービスも増えてくるだろう。
音楽業界のスタンスとしては、楽曲を販売して、その販売代の利ざやをもらうのがわかりやすく、簡単でいいわけだが、いまどき、ものだけを売るサービスは成り立たない。フリーで提供するフロントと、利益を生み出すバックエンドを使い分けたビジネス構造に展開していくしかないに違いない。
◆国内の著作権団体、アップル・EMIらの「DRMフリー」サービスを牽制[CNET]
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20346627,00.htm
◆EMIのDRM撤廃で音楽業界に広がる波紋[ITmedia]
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/04/news076.html
◆EMI Group、iTunes StoreでDRMフリーの楽曲を販売へ[CNET]
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20346281,00.htm
◆著作権についてはこちらも御覧下さい
デファクト・スタンダードの真実
http://www.incunabula.co.jp/dtp-s/defect_standard/
ラベル:DRM,Apple,iTunes