Vistaフォント、混乱の真犯人は誰だ その2 解き放たれた文字数の制限



 日本のDTP元年は1988年か1989年である。JIS83に制定された年には、ワープロ用のビットマップフォントしかなかった。些細な字形の変更はビットマップフォントでは反映できないわけである。

 その後のJIS90でも、JIS83の字形がほぼそのまま継承されたので、日本語フォントはJIS90の字形がスタンダードになったのである。つまり、MacintoshにしてもWindowsにしてもアウトラインフォントの漢字の字形は、すべてはJIS83からほとんど変わっていないのである(JIS90で追加された2文字を除いて)。

 JISがどのようにして文字の規格を決めているのかについて、私は詳細をしらない。しかし、潤沢な予算があって専業の委員がいるわけではなく、専門家の中で委員に任じられた人が、手弁当で作業を行っているのが現実のようである。

 つまり、立場上携わらなければならない人や、自ら手を挙げて参加した人によって委員会が構成されることになる。そうすると、委員の構成が変わると、文字に対する考え方が変わり、「標準字形」に対する考えも変わってくる。

 1983年以来、2004年まで約20年にわたって維持された新字形の「例示字形」を、JIS78で採用された旧字形に変更した理由は、日本の中に

古い字形を使うべきだ

と考えている人がまだまだ沢山いたということである。国語審議会が古い字形を「表外漢字字体表」として答申したということは、「古い字形こそが正しい」と主張する人が「識者」のなかに多かったからであろう。活版インクの「にほい」にノスタルジィを感じるのと似たようなものかもしれない。

 私は、新しい字形に馴染んでいるので、いまさら旧字形を使いたいとは思わないし、戻したいとは思わない。しかしJISの委員の中には、

旧字体に戻してもいいのではないか

と考える人もいただろう。そういう人が多くなると、あるいは発言力のある委員にそういう人がいると、JISの規格にある例示字形を変更したいという考えが支配的になる。つまりこれは、「古い字形を使うべき」派が、日本にはまだまだ沢山いるということなのである。

 私が思うのは、

文字というものは変わっていくもの

ということである。昔「正しい」字形が、今でも「正しい」わけではない。古い文字を守らなければならない理由はどこにもない。エジプト人がヒエログリフを使わないように、その時代で使う文字は変わってくる。もし、「変えてはいけない」というのであれば、漢字は「甲骨文字」を使うしかない。

 もちろん古い字体字形を使いたい、という考えを否定する気もない。古い字形も使えばいいのである。両方使えば、それでいいわけである。ヒエログリフは約3,000文字(一説には7,000文字ともいう)、甲骨文字は3,000文字程度と言われているので、ユニコードを割り当てることはまったく問題がない。

 かつてパソコンの処理速度が遅くメモリが貧弱であったとき、文字数を増やすのは罪悪であった。そのときは、限られた資源を有効に活用しなければならなかったのである。だから、文字数を増やすことはできなかった。

 また、フォントの制作も、文字数が増えると天文学的なコストがかかった。第二水準までの約7,000文字をトレースしてアウトラインデータ化する手間を考えると、一書体当たりの制作コストは数千万円にもなったからである。

 しかし、いまはどうであろう。二万字あっても、CPUの処理に負担を与えるだろうか。メモリや外部記憶装置が不足することはあるだろうか。そんなことはないのである。フォントの作成にしても、いまでは千文字くらいを手書きすれば、あとはソフトでその他の文字を自動生成可能なのである。

 つまり、文字数を増やしても、誰も困らないのだ。だから、パソコンで使える文字はどんどんと増えているのである。技術的にも経済的にも、文字数を増やすことのデメリットは少ないのである。障害がないとなれば、文字数が増えていくのは自然の理である。

 収録できる文字数が飛躍的に大きくなったとき、ほとんど制限もなく文字コードを増やすことができる時代に、包摂は必要だろうか。






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Vistaフォント、混乱の真犯人は誰だ

  その1:包摂はどこまで本当か
  その2:解き放たれた文字数の制限
  その3:JISの包摂に明確な基準はあるか
  その4:使われている文字は字形であっても拒否するのは非現実的だ
  その5:ユニコードは字形を追加するためにあるのだ

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