2012年09月07日

サムソン最大の気がかりはグーグルに切られることだ

 アップルとサムソンの訴訟はアメリカでの敗訴を受けて、ほぼサムソンの負けが決まった。サムソンの模倣がアメリカ法廷の陪審員が認めたので、既存のサムソンデバイスはアメリカでの販路を失いつつある。最大マーケットであるアメリカで売れないことになれば、サムソンの打撃は大きい

  もちろんアップルの模倣でない新しいデバイスをリリースすれば、デバイスの販売はできる。しかし、サムソンが新しいデバイスをアップル製品を模倣せずにリリースできても、またぞろ訴訟されないとは限らない。デバイスを訴訟されないように設計すると魅力的な機能が失われ売れなくなる。

 アップルはアメリカでの勝訴を受けて、「GALAXY S III」などの新しい機種も別の特許案件に追加した。サムソンに10億5000万ドルの賠償金支払いを命じた訴訟以外にも、別の特許訴訟を起こしていて、そちらでもサムソンが負けると、賠償額がさらに膨れ上がる。「GALAXY S III」は発売開始3ヶ月強で2000万台を売ったが、サムソンにとっては痛し痒しかもしれない。

 サムソンの年間売り上げはアップルと比肩する。2011年で1470億ドルとなっている。というよりアップルがこの1〜2年で売り上げを急上昇させたので、アップルはサムソンと肩を並べるようになった。日本でいうと、トヨタ自動車級の企業になる。モバイルデバイスの比率はまだまだ少ないが、もっとも成長している分野であり、ここが伸びなくなると、サムソンの今後の成長は厳しい。

 Android端末は普及しているが、廉価なローエンドモデルと機能満載のハイエンドモデルに分類できるだろう。利益が生まれるのはハイエンドモデルであり、模倣できなくなるとハイエンドモデルの生産が封じられる。そうなると販売数が増えても利益を生み出しにくくなる。

 サムソンがモバイルデバイスで生き残るには、iPhoneやiPadにない先進的な機能を搭載するしかない。それには時間かかかりそうだ。しかしいままで大樹の下で模倣ビジネスを展開してきたサムソンにとっては、模倣を禁じられると方向転換するのは大きな痛みを伴う。高度成長期の日本は模倣で海外に進出したが、その手法はアップルには通じないわけだ。

 もう一つの懸念は、サムソンがAndroidデバイスのリーディングカンパニーでいることができるかどうかであろう。いままではAndroidデバイスはサムソンの一人勝ちだったが、その構図は崩れるかもしれない。グーグルの目的は携帯デバイスでの広告スペース増やすことであり、デバイスメーカーやベンダーにこだわりはない

 グーグルはアップルとの全面戦争を望んではいない。望みはAndroid端末の普及だけであり、サムソンの売り上げが増えることではない。いままではサムソンが数多くのAndroid端末を販売していたので、グーグルとサムソンの紐帯はきつく結ばれているが、これだけAndroid端末が普及したとあっては、サムソンとの紐帯は緩くしてもよい

 アップルは部品の発注からもサムソン外しを始めている。いままでは技術と価格、そして供給量の関係で契約したサムソンを外せなかったが、契約が切れたこともあり、他社に部品をシフトしつつある。シャープに莫大な金額を投資してまで液晶の生産ラインを構築したように、これからはデバイス販売で競合しないメーカーを整備してくるに違いない。

 もともとグーグルの二人の創業者はアップルの信奉者であり、サムソンとの訴訟がグークルとの直接訴訟になることを避けるだろう。8月末にアップルのクックとグーグルのペイジは電話会談を行い、ホットラインを継続することに合意した。会談の中でアップルがサムソン排除の提案をすると、グーグルはそれに配慮する可能性はある。提案しなくても、グーグルが先回りする可能性もあね。ジョブズが生きていればホットラインはなかったかもしれない。

 アップルは部品調達だけでなく、グーグルに圧力をかけてくる可能性はある。サムソンを全面降伏させるには、もっとも効果的な手である。グーグルはサムソンを守るのか、切り捨てるのか。厳しい選択を迫られるのはサムソンだけでなく、グーグルも同じであろう。

 小牧・長久手の戦いで勝った家康は、それでも秀吉に屈し三河駿河の所領を取り上げられて関東に移封された。しかしそこから我慢して秀吉の死後に乾坤一擲の勝負にでた。グーグルがアップルに勝つには、いまは我慢して涙をのんでも切り捨てるものは捨てるしかないかもしれない。



◆Apple、「GALAXY S III」を“特許侵害”リストに加える
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1209/03/news034.html


◆スマートフォン好調で年間売上は過去最高……サムスン決算発表
http://news.livedoor.com/article/detail/6228430/


◆AppleとGoogleのCEOが秘密裏に話し合い 特許紛争の停戦模索?
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1208/31/news038.html


 


posted by 上高地 仁 at 11:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース&トピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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