まずInDesignドキュメントを開いてテキストをコピーし、iBooks Authorに貼り込んだ。それぞれの章をチャプタにし、トピックをセクションにペーストした。タイトルと本文だけを挿入するだけなので、それほど時間はかからない。
iPadを接続し、iBooks Author書類をプレビューしてダウンロード。iTunesで["ユニバーサルアクセス"を設定]を開いて「VoiceOver」を選択する。iBooks Authorで書類を開いて、テキストを選択すると読み上げが始まるので、読み上げられた音声を聞きながら文字校正すればよい。
しかしiBooks Authorの音声読み上げ機能だが、使ってみると校正用にはとても使えない代物だった。問題点をまとめると
読み上げ部分がうまく選択できない
ページめくりができない
ということである。テキスト部分をタップすると、テキストが囲まれて選択され読み上げが始まるが、本文テキストは1行しか選択できないことが多々あった。1行ずつ選択して読み上げていくのであれば、校正には使えない。横向きで1行を選択して縦向きに変えると、いくつかの段落が選択状態になり、まとまって選択されて読み上げはできたが、スイスイとはいかない。

*テキストが1行しか選択できないiBooks Authorの読み上げ機能。
また1ページを読み上げた後、次のページの移動できないのだ。VoiceOverを使っているときは、通常のタップ動作は効かない。VoiceOverをオフにするとには、三本指でタップすればいいが、それをしてもフリックしてページめくりしたり、スクロールできるわけではない。ページを送る場合は、iTunesでVoiceOverをオフにしてページをめくり、もう一度VoiceOverをオンにするしかなかった。
VoiceOverをオンしたときのページめくりの方法はあるような気がするが、見つけることはできなかった。ただ、読み上げ範囲が1行というのは使い物にならないので、iBooks Authorでの音声読み上げ校正はあきらめるしかなさそうだ。iPadの音声読み上げ機能はすばらしいが、iBooks Authorのアクセスビリティの使い勝手は完成度の低さに驚嘆するしかない。
ジョブスがiBooks Authorの担当だったら、こんな未完成のソフトは認めなかったのではないかとさえ思えてしまう。もっともVoiceOverをオンにすると、ホーム画面のページめくりもできないので、アクセシビリティ機能を搭載しても完成は目指していないのかもしれない。
さて、iBooks Authorでの読み上げ校正はあきらめるしかなかったが、部分的に読み上げ校正してみて、やはり効果の大きいことは再認識した。テキストを読んでも気がつかない「てにをは」の間違いは音声化すると判別しやすくなる。文字校正はこれからは視認と聴認が必須となるのではないか。
iBooks Authorが駄目でも、他にiOS用のの読み上げソフトはあるのではないかと探してみた。そうすると優れた読み上げ機能を搭載したアプリを見つけることができた。それが
金沢文庫
であった。無料のLite版があり、まずはインストールしてみる。書籍の読み上げて使うのではなく、文字校正ツールとして使えるかどうかをチェックした。
金沢文庫はもともと青空文庫のビューワーソフトだが、ダウンロードした青空文庫を読み上げる機能をもっている。あわせてテキストファイルを取り込み読み上げにも対応する。
iBooks Authorのテキストをエディタにもう一度ペーストして、金沢文庫に取り込んだ。開いてみると、改行が反映されていないではないか。これは使いにくい。青空文庫ベースのビューワーなので、改行コードの問題だろうと思い、青空文庫の改行コード「CR+LF」にしてファイルを保存した。要するにWindows形式でのテキストファイル保存である。そうすると、改行は反映された。
これはいけると読み上げを始めた。音声は女性(マキ)と男性(せいじ)の二種類があり、使い分けることができる。複数回音声での読み上げ校正をするのであれば、音声を切り替えた方が校正しやすくなりそうだ。
使いにくいのは、途中で止めると、止めた部分からの読み上げができないことである。つまりポーズ機能はない。読み上げはページ単位なので、トピックのテキストを1つページを収まるようにしたい。改ページの方法も青空文庫と同じであった。つまり改ページ部分に
[#改ページ]
と挿入するのである。そうするとそこであたらしいページになる。読み上げを止めたら、[#改ページ]した部分からは読み上げを始めることができるので、適当な部分で[#改ページ]していけばよい。この方法で『Xcode 4でiOSアプリの設定と申請を最短距離でする方法』のほとんどのテキストを読み上げ校正した。見落としそうな部分をいくつか見つけることができた。これからは文字校正に金沢文庫は手放せなくなりそうである。

*金沢文庫で表示したテキストファイルとボイス機能。
なお金沢文庫 Lite版は、取り込んだテキストファイルは10ページまでしか扱えない。設定メニューの文字詰めを最大にしておくと、1ページにたくさんの文字を詰め込めるので、Lite版でもより多くのテキストを読み上げすることができる。また、テキストはシフトJISなので、未対応の文字コード1つでもあると、エラーが表示されてファイルは開かない点には注意したい。
◆iPhoneに朗読させる [おれのカラータイマーG]
http://nabe0502.blogspot.jp/2011/07/iphone.html
◆金沢文庫[iTunesプレビュー]
http://itunes.apple.com/jp/app/jin-ze-wen-ku/id441208782?mt=8
◆Xcode 4でiOSアプリの設定と申請を最短距離でする方法
http://bit.ly/Jk88Bc
◆SakuttoBook(サクッとブック)でiPhoneアプリを作る方法
http://bit.ly/mhgjCG
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