Acrobat X Proで「抜きなし透明グループ」が表示されるとき、
描画カラースペース :デバイスCMYK
描画モード :標準
と表示されている。「描画カラースペース」はPDFのカラースペースを表示している。ここでは「デバイスCMYK」とあるので、ICCプロファイルが埋め込まれてないCMYKモードのプロファイルであることを示している。「描画モード」は「標準」となっている。ここでいう描画モードはPhotoshopやIllustratorの透明パネルにある描画モードのことだろう。であれば「標準」は適用されてないことを示しているはずだ。

*透明オブジェクトを選択していないのに「抜きなし透明グループ」がリストされる。
この「抜きなし透明グループ」はリストの最上位におかれていて、表示されるときは「描画モード :標準」ということで、透明が使われていないことを宣言している。Acrobat 4.0互換の場合は表示されないようなので、PDFに透明が使われていることを現れているだけのようだ。
いくつかのPDFで試してみたが、Acrobat 4.0で保存したPDFではリストされず、Acrobat 5.0以降でも、ページ内に透明があるときだけオブジェクトインスペクターの最上階層にリストされた。透明オブジォクトを選択していない場合でも、「抜きなし透明グループ」はリストされる。
実際の透明効果の内容は、オブジェクトインスペクターで透明オブジォクトを選択して表示すればよい。描画モードが使われていればそれが、半透明が使われていれば「アルファ」としてリストされる。
もともとオブジェクトインスペクターはクリックしたオブジェクトのデータ属性を表示するものであるにも関わらず、なぜページ内に透明があるときに「抜きなし透明グループ」として表示するのだろうか。クリックしたオブジェクトに透明がなくても「抜きなし透明グループ」が最初にリストされるのはなぜなのだろうか。
プリフライトには「Null 透明効果あり」というカスタムチエックがある。「Null」というのはカラという意味なので、透明効果なのだが、描画モードも不透明も使っておらず中味はなしということになる。「透明効果なし」と「Null 透明効果あり」の違いは実質的にはなにもない。

*プリフライトのカスタムチェックにある「Null 透明効果あり」
「抜きなし透明グループ」はおそらくプリフライトにある「Null 透明効果あり」と同じものではないだろうか。訳語がなぜ異なっているかわからないので、ひょっとすると違うものなのかもしれない。しかし意味するところは同じであり、同一のものである可能性は高い。
透明はあるが、使ってはいないという「Null 透明効果あり」という設定がなぜ必要なのかはよくわからない。憶測するに、透明ではないが透明の影響を受けるということではないか。ページ内に透明があってラスタライズ一杯で透明を分割・統合すると、透明が使われていないオブジェクトは画像に変換されてしまう。したがってオブジェクトに透明が適用されていなくて、出力時に画像化される可能性がある考えると自然だろう。
PDFのページ内に透明があるとき、なぜAcrobat X Proから「抜きなし透明グループ」を最上階層にリストするようになったのか。それはおそらくカラーモードに関係しているのではないか。単に透明の影響を受けるおそれがあるだけであれば、「抜きなし透明グループ」だけをリストすればよい。そこにカラーモードを表示させる理由はどのようなものなのだろうか。
透明を分割・統合するとき、分割時のカラースペースを適切に選択しなければ、適切に透明効果を分割できない可能性がある。透明分割時のカラースペースは[出力プレビュー]の[透明変換用カラースペース]で表示されるが、このカラースペースとページ内のカラースペースを合致させるために表示するようになったのではないだろうか。
いずれにしても、オブジェクトインスペクターの表記についてはもっとわかりやすいヘルプなり解説は不可欠だと思うが、開発元にも使い方を理解しているスタッフはほとんどいないのかもしれない。
ラベル:Acrobat X Pro