2011年12月21日

Acrobatの鉄則でPDFのファイルサイズを小さくする方法を考える

 PDFでデータ転送するとき、ファイルサイズをできるだけ小さくしたいということがある。もっともサイズを小さくするための手間をかける必要があるかどうかという問題はあるにしても、品質が変わらないのであれば、ファイルサイズは小さい方がよい。より実用的なPDFのファイルサイズを小さくする方法を考えてみた。

  結論から言うと、Illustratorはフォントを埋め込みにし、「Illustrator編集機能をオフ」にする。そして画像パネルでダウンサンプル解像度と「次の解像度を超える場合」を同じにする。Illustratorできるファイルサイズを軽くする設定はこれくらい。

 ややこしいのは透明の分割で、透明効果が複雑に重なりあっている場合は、透明は分割しない方がよい。試しにIllustrator CS4のサンプルファイル内にある

グランジ風心臓での生活

というファイルで試してみた。このファイル、Illustrator形式のままだと1MBもないが、プレス品質をベースにしてAcrobat 4.0互換で保存する。「Illustrator編集機能をオフ」にしても透明を分割すると、約17MBとなってしまう。EPSで保存すると80MBを超えてしまう。

111221-01.gif
*透明てんこ盛りのサンプルアートの「グランジ風心臓での生活」

 イラストなので透明を分割するとグラデーション部分がパスに変換されてしまいファイルサイズが大きくなってしまうということもあるだろう。しかしそにれにしても、ファイルサイズの肥大化は異様でほどではないか。

 Acrobat 5.0互換で編集機能オフ、フォント埋め込みで保存するとたった580MBになってしまう。Illustratorで印刷用データを作成する場合は、フォントはアウトライン化することが「常識」となっているが、アウトライン化するとファイルサイズは大きくなる。素性の確かなフォントを使っている場合は、アウトライン化せずに埋め込む方がよい。

111221-02.gif
*オリジナルは「984KB」で透明を分割してAcrobat 4.0互換で保存すると「17.1MB」となる。AcrobatからPostScriptファイルを書き出すと「24.3MBとなり、Distillerで再PDFにしても「12.1MB」になってしまう。

 なお、InDesignではPDFを書き出した後PDFの最適化を適用するとファイルサイズがせ小さくなることがある。Acrobatの鉄則として

PDFのファイルサイズをもっとも軽くする方法

というトピックを仕上げた。これはDTP-S倶楽部会員向けに配信する予定のもの。会員の方には近いうちにお届けする予定だ。



あなた:PDFのファイルをできるだけ小さくするもっとも簡単な方法ってありますか。ネット経由でPDFを送るとき、できるだけ軽くしたいですよね。

マスターヨーダ:まず最初に確認したいんじゃが、何のためにファイルサイズを小さくするんじゃ。ファイルサイズを小さくすれば、PDFの送信やダウンロードは早くなるが弊害もあるぞ。

あなた:もちろん、弊害のないようにファイルサイズを小さくしたいんです。そういう方法はあるでしょうか。

マスターヨーダ:そうではない。重要なことは、PDFをどのような目的に使うのかということじゃ。Acrobatには「PDFの最適化」という機能があるじゃろう。ファイルサイズを小さくすることを目的にするのではない。最適化した結果ファイルサイズが小さくなるというわけじゃ。

あなた:マスター、それはわかります。わかりますが、求めているのは最適化するではなくて、ファイルサイズを小さくすることなんです。

マスターヨーダ:同じことじゃ。最適化することでファイルサイズが小さくなるわけじゃ。印刷用PDFの最適化と、モニタでプリントすればよいPDFの最適化、モニタで閲覧するだけよいPDFの最適化では最適化する設定が異なるわけじゃ。

あなた:PDFの用途がハッキリしなければ、PDFを最適化することはできないんですか。

マスターヨーダ:用途がわかっておらんと、誤った結果を導くだけじゃ。PDFを最適化する場合、まず目的をはっきりさせることが重要じゃな。印刷用PDFでは画像の解像度を「150 ppi」にダウンサンプルするまい。しかしモニタで見るだけであれば「150 ppi」でも十分じゃ。

しかしそれだけではないぞ。PCやソフトウェアの解説書であれば、スクリーンショットが多いわけじゃな。スクリーンショットはダウンサンプルするとディテールが判別できんこともある。その場合はモニタ用であってもダウンサンプルせん方がいいじゃろうて。

PDFを最適化するときのポイントは大きく分けると2つある。

不要なデータの削除
画像の不可逆圧縮


じゃ。PDFには不要なデータが含まれていることがある。それを削除することでファイルサイズは小さくなる。

あなた:不要なデータというのは、具体的にはどういうものでしょうか。

マスターヨーダ:印刷用PDFではしおりやブックマークなどの情報は不要じゃ。またアプリケーション固有の情報が含まれておると、ファイルサイズは肥大化する。アプリケーション固有の情報というのは、たとえばIllustratorで

Illustratorの編集機能を保持

というオプションじゃな。ここをチェックしてPDFを保存すると、IllustratorのネイティブデータがPDF内に含まれる。Illustratorで開くためのファイルとPDFで保存したファイルの両方がPDF内に書き込まれておる。この「Illustrator編集機能」分のデータを削除するとファイルサイズは小さくなる。

あなた:Distillerで作成した場合はアプリケーション固有のデータは含まれないんですね。IllustratorでPDFとして保存するより、EPSにしてDistillerでPDFに変換するほうが軽くなるということでしょうか。

マスターヨーダ:必ずしもそうではない。データの安全性・安定性を考えると、DistillerでPDFにするほうが確実じゃろう。しかしな、Distiller経由するとファイルサイズが大きくなることもあるんじゃ。

〈本編に続く〉
 
posted by 上高地 仁 at 11:11 | Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「素性の確かなフォント」というのはどういうことですか?
Posted by かわい at 2013年08月09日 19:33
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