PDF出力トラブルを知れば防げる印刷事故にはどのようなものがあるか



 印刷用データの出力はPDFでほとんど行われるようになった。印刷用データの大半はIllustratorなので、入稿はいまでもIllustrator形式やEPS形式でも行われているが、Illustrator形式もEPS形式もPDFに変換して出力しているケースが多い

  かつてはIllustratorファイルはEPSにしてQuarkXPressに大貼りしていたが、最近はEPSではなくPDFにしてInDesignに貼り込んで割り付けることが多い。Illustrator形式でもPDF互換ファイルで保存しておけば、InDesignにそのまま貼り込むことができる。その場合はInDesignに反映されるのは、Illustratorのネイティブデータではなく、保存時に生成されたPDFである。

 PDFはモニタ描画や出力用のイメージを直接記述することで、従来のPostScriptに比べて出力結果がRIPによって異なるというトラブルは少なくなった。PostScriptは命令文なので、コマンドを解釈する方法が異なると出力結果が異なると可能性があった。Illustratorでもレガシーバージョンでは、グラデーションなどはデータが消失したり、オブジェクトサイズが変わることもよくあった。

 出力イメージを演算によって算出する場合、PostScriptを解釈するソフトウエア(インタープリター)での非互換を避けるのは難しい。しかしPDFであれば、演算ずみ描画記述データなので、出力の非互換はおこりにくい。ただし実際にはPDFでも出力トラブルは発生する。その多くは、PDFに起因するというより、PDFを作成するアプリ側に問題があることが多い。いくつかのトラブルを具体的に上げてみよう。


■Illustrator 10までのオーバープリント

Illustrator 10.0で墨ベタにオーバープリントしてPDF保存すると、オーバープリントのオーバープリントモードが「0」になってしまう。オーバープリントモードが「0」の場合、分版出力すると実質的にオーバープリントされない。出力前にオーバープリントモード「0」を「1」に変更しなければならない。Illustrator CS以降ではオーバープリントして書き出しても、オーバープリントモードが「0」にはならない。

■ 修正できないIllustratorの白オーバープリント
Illustratorで白オブジェクトにオーバープリントしEPS保存し、InDesignに貼り込むと、白オーバープリント部分まカラーが「なし」になり、オーバープリントを削除できなくなる。この場合は、Acrobatで調べることは可能だが、修正はできない。


■ Illustrator CS/CS2の分割水平線
Illustrator CSとCS2にEPS画像を貼り込み、PDF保存すると、EPS画像は分割されてPDFに埋め込まれる。EPS形式を使わないか、EPSは埋め込んでからPDF保存すれば問題ない。あるいはIllustratorからEPSにしてDistillerでPDFにすることで回避できる。アップデータでは修正されなかった、Illustrator側のトラブル。Acrobat Proで回避できる場合もある。


■ InDesign CS3/CS4の出力時に消失する効果オブジェクト
InDesignで効果オブジェクトを指定し、Acrobatでタッチアップしたり、透明分割対応の出力機で出力すると効果の一部が消失する。効果オブジェクトに角度が指定されているときに発生する。


■ InDesignでPDF内の縦組がずれて出力される
主にInDesignで縦組テキストに透明とオーバープリントを指定し、背面に画像が配置されていると、PDFの透明を分割・統合するときに縦組テキストがずれてしまう。Acrobat 9 Pro、Acrobat 9 Pro互換RIPで発生する。Acrobat X Proでは発生しない。なお、同じ条件であれば、Illustratorでも縦組はずれる。


 これらのほとんどアプリケーションがPDF作成するときの問題であり、印刷用として適切に書き出されていないことに起因する。トラブルを回避するには、事前にAcrobatなどのプリフライトで確認するしかない。プリフライトで調べることができれば、事故を招かずに出力印刷することができる

 印刷事故の多くのトラブルを回避するには、まず現在どのようなトラブルがあり、どのような対処方法があるのかを知っておくことから始まるのではないか。事故が起こってからではリカバーできない取り返しのつかない問題に進展することもあるだろう。


というわけで今月の22日に大阪で「印刷事故を取り締まる方法」セミナーを行う。検証ファイル付きのテキストを用意して、アプリケーションに潜むバージョン違いのトラブルを一覧し、その原因と対策を解説する。印刷事故に巻き込まれる前に、是非ともご参加いただきたい。


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http://bit.ly/srdHjQ


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タグ:PDF

posted by 上高地 仁 at 11:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 最新ニュースピックアップ
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