キャンペーンの趣旨は本体代を月賦で払ってもらうと、100MBまで3G通信費はオマケで支払い不要、という意味である。一応、回線使用料が発生した場合は、本体代は請求しないということになっており、最大でも回線使用料とWeb基本料の合計となる。したがって正確にいうと
iPad2が1,860円からキャンペーン
ということなる。
自宅でWi-FiのみでiPadを使う場合は関係ないが、Wi-Fiのない環境でも使いたい場合は安く使えて便利だろう。ただし、100MBまではただでも、
111.5MB(1パケット128バイト/914,060パケット)
に至ると最大の回線使用料が発生する。100MBと111.5MBの間の裂け目は浅く、誰もが気がつかずに超えてしまう。したがって、安易に動画などのトラフィックの多いサイトに3Gでバンバン接続すると、あっという間に毎月5,295円の支払いになってしまう。ソフトバンクの狙いはここにあるといってよい。
匿名掲示板ではこのキャンペーン、バカバカとたたかれているが、本当にiPad2本体代がただになったら、もっと怖いのではないか。キャンペーンの内容を読めば、最低でも月々1,860円が必要なのはピーマンでもわかる。Wi-Fiの本体と同じ費用で、お試しで3Gが使えるのがメリットなのである。いろいろと縛りはあるにしてもだ。もしiPad2本体を完全無料にしたら、その裏にあるソフトバンクビジネスこそを疑うべきだろう。
iPadの販売については、おそらく3G版よりWi-Fi版の方が売れているだろう。デバイスにお金を払うのはまだしも、毎月固定費が発生するのはなかなかつらいものがある。しかしiPhoneを使っていると、iPadでも3G回線に繋ぎたくなることはある。モバイルWi-Fiルーターを持っていない場合である。
ソフトバンクのモバイルWi-Fiルーター、ULTRA WiFiは月々3,880円となっている。iPad2をフルに使ったときの回線使用料から本体代を引いたときとあまり変わらない。つまり、今回のiPad2キャンペーンはiPad2専用にモバイルWi-Fi機能を切り売りしているわけだ。
この機能がおいしいのは、3G接続のためのデバイスが不要なので原価がかからないことだろう。ULTRA WiFiを売ればデバイスの製造費、物流コストがかかるが、iPadでは機能が内蔵されているので、別途デバイスは不要になる。複数のデバイスを接続することなく、iPad2単体でULTRA WiFiに匹敵する費用が請求できるのだ。これはおいしい。
ソフトバンクによると、ユーザーの約四割は月の回線使用料が100MBを超えないそうだが、逆に言うと約六割は100MBを超えるわけである。六割のユーザーは毎月5,295円を支払うことになるわけだ。差額の約3,500円はそのままソフトバンクの儲けなのである。
おそらくこのキャンペーンでiPad2を申し込こんだユーザーの大半は、最初は100MBを超えないように努力するだろう。しかし、使ううちに3G回線の利用率が高くなっていく。子供がいたりすると、おかまい無しに3Gで接続してしまう。App Storeで有料アプリは買わないぞと決意しても、一度その壁が崩れるとあとはなし崩しになってしまうように、iPad2ユーザーの多くは111.5MB越えを受け入れるようになっていくに違いない。
したがって、このキャンペーンユーザーの六割が111.5MB超になれば、差額の3,435円はまるまるソフトバンクの利益となる(販売店のキックバックは別にして)。キャンペーンでiPad2を一万台売れば
6,000台×3,435円=20,610,000円
となり、利益は月間で二千万円になる。もちろん販売目標が一万台ということがあろうはずはない。もし十万台だとすると、月間で二億円の粗利を生み出すことになる。
ソフトバンクの年商は約三兆円で、営業利益は一千八百億程度。月間二億、年間で二四億程度は大きな数字ではないかもしれないが、少なくともULTRA WiFiのビジネスよりおいしくて儲かるのは確実ではないだろうか。この方法でもしiPad2を四十万台売ると、年間では百億の粗利を生む。これからのソフトバンクの儲けの柱になる可能性はあるだろう。
iPadで3G接続するエクスペアレンスを本体価格だけで提供し、本格的に使う場合は、きっちりいただきますよという方式で、はやりのフリーミアムのビジネスモデルとほぼ同じスキームであるといってよい。本体を買えば、一定の3G使用料はタダという意味では、マーケティング手法は無料ゲームでユーザーを誘うモバゲーやグリーと変わりない。
iPadはiPad2のリリース以降、販売は好調のようで、累計で二百万台弱というニュースもあった。日本だけで二百万台はかなり多いのではないか。潜在ユーザーはまだまだいるだろう。タブレットはiPadの前にiPad無し、iPadの後ろにiPad無しというのが現実だからである。
しかしソフトバンクが実質的にiPadの値引きを始めた理由は、そろそろiPad3のリリースが近いということではないか。現在のiPad2製造ラインに行った投資の回収効率を最大限するために、現行機種のバーゲンを3G回線と抱き合わせて行っているのである。売値は変えず、オマケを付けてオトク感を演出しているわけで、この手法を批判するのであれば、オマケてんこ盛りのテレビ直販を先に批判しければならない。
「アレ コレ ソレ キャンペーン」は11月30日までである。ということは、その後にiPad3が発表されると考えるのは、とても自然ではないか。12月始めに発表があり、その月かもしくは来年の年初には販売が始まると予想したい。
初代iPadユーザーは、iPad3まで待つしかない。もし画面解像度が倍以上になっていれば、iPadは別の製品になっていると考えてもよい。解像度が倍になれば、新しいエクスペアレンスが得られるはずだ。そのときこそiPadは「買い」なのである。iPad3でソフトバンクが「アレ コレ ソレ キャンペーン」が行うかどうかは、このキャンペーンの成否で決まるかもしれない。
◆iPad 2、実は最低1,860円/月! 月月割はパケ代にしか適用されないカラクリを応用 流石禿汚い[2チャンネル☆まとめ]
http://bit.ly/pdyjYe
◆iPhone 4Sを買えばiPad 2が0円? 「アレ コレ ソレ」は得か[日経トレンディネット]
http://nkbp.jp/n3hIce
◆iPad2が月額料金0円〜:キャンペーンはじまる[ソフトバンクモバイル]
http://bit.ly/ruehaG
ラベル:iPad2
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