2011年04月20日

Acrobat X Proにバージョンアップするメリットはあるか

 AcrobatがバージョンアップしてAcrobat Xになって久しい。が、Acrobat 9 ProからAcrobat X Proへのバージョンアップでは驚嘆するような新機能は用意されていない。いくつかの機能がブラッシュアップされて使いやすくなったり、精度が高くなったりしている程度である。Acrobat X Proにバージョンアップするメリットはあるのだろうか。

  Acrobat Xになったとき、PDFバージョンは変更されなかった。PDFバージョンは「PDF 1.7」のままである。確かに大きな機能の追加はない。PDFバージョンに影響しそうな機能はPDFポートフォリオぐらいか。PDFポートフォリオは非互換の機能である。

 PDFポートフォリオは、取り込んだテキストファイルのフォントを埋め込めるようになったり、見せ方が変わったりしているが、「ウリ」があるとすれば、Webで共有する機能だろう。PDFポートフォリオをFlashに書き出し、WebのサーバにアップするとPDFポートフォリオのまま表示する。なぜかローカルでは使えない。ローカルでも使えるようにすれば面白いのに、ローカルでの書き出しFlashはローカル閲覧禁止である。

 PDFポートフォリオは内部のプログラムが書き直されているはずなので、Acrobat X Proで保存したPDFポートフォリオはAcrobat 9 Proでは開かないのは当然だろう。しかしそれ以外はスキャナのOCRの読み込み精度が上がったとか、Wordへの書き出し機能が向上したとかであり、PDFそのものには関係しない。バッチ処理改めアクションウィザードもしかりである。

 PDFそのものには大きな違いはなさそうなのでPDFバージョンをアップしないのは理解できるが、それでもAcrobat X Proで保存したPDFは、Acrobat 9 Proでは開かないのである。つまり、バージョンは変わらなくても非互換であることには変わらない。非互換であれば、いっそバージョンをアップすればよかったのではないか。

 PDFバージョンはAcrobat 8のときに「PDF 1.7」となったがその後は据え置かれたままで、Acrobat 9 Proで保存したPDFは

PDF 1.7,Adobe Extention Level 3(Acrobat 9.x)

となる。「Adobe Extention Level 3」というのは一体なんなのか、まったく意味不明である。PDFバージョンをアップすることと、仕様を拡張することの違いがわかりにくい。ちなみに「PDF 1.7」はISOで認定されているので、そのあとPDFバージョンをアップせずに、仕様の違いはAdobe社内の拡張仕様としたのかもしれない。Acrobat X Proで保存するとPDFバージョンは

PDF 1.7,Adobe Extention Level 8(Acrobat X.x)

と表記されている。

110420-01.gif
*PDFバージョンは「PDF 1.7,Adobe Extention Level 8(Acrobat X.x)」となっている。


 Acrobat X Proにバージョンアップする理由があるとすると、印刷用出力で使う場合だろう。PDFをAcrobatで透明分割する場合は、Acrobat 9 Proは使い物にならない。というのはPDF内に

縦組テキスト
オーバープリント
背面に画像
透明効果


が含まれていると、Acrobat 9 Proで透明を分割統合すると、縦組のテキストがずれてしまうのである。Acrobat 9 Proだけではない、Acrobat 9 Proと同じ透明・分割統合エンジンを搭載しているRIPでも発生しうる。とくにInDesignはデフォルトで墨文字がオーバープリントされているので、問題になりやすい。

そんなわけで、Acrobat 9 ProでInDesignのPDFを透明分割すると、
全ページチェック、チェック、チェック。


なのである。Illustratorでも発生するが、テキストにオーバープリントすることはあまりないので、頻度は少ない。CS2以降のバージョンが対象。

 そのトラブルがAcrobat X Proでは解消された。上記条件のPDFをAcrobat X Proで分割しても、縦組テキストはずれないのである。縦組のテキストのずれはチェック不要になった。やっとAcrobat X Proで透明が問題なく分割できそうである。Acrobat X Proを使わない場合は、Acrobat 8 Proでも対処方法はあるが、Acrobat X Proを使う方が間違いない。

 Acrobat 9 Proの新機能を詳細に解説した『バージョンアップの裏側を覗くAcrobat 9 新機能の真実』にAcrobat X Proの追加機能の解説を追加したものをiPhoneアプリとしてリリースした。

110420-02.PNG


iPhoneでも開くが、iPadで2倍表示していただくとわかりやすい。



◆Acrobat 9 X Pro新機能の真実[iTunesプレビュー]
http://bit.ly/fU6dG8

*App Storeで「acrobat」で検索してください。


◆縦書き文字に透明効果で文字が欠ける問題[大日本スクリーン/出力の手引きWeb]
http://bit.ly/ifY7og

 
posted by 上高地 仁 at 12:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | Acrobat 9 公開の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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