とりあえず、過去にiBooks用に作成したEPUBを取り込んでみる。まず驚いたのは、表紙画像が表示されないことだった。表紙画像はJPEGで作成している。どうやらJPEGには対応してないようだ。青空形式ではpng画像に対応していると記載されているので、JPEGをpngに変換して差し替えると表紙画像が現れた。
本文テキストを縦組みで開いてみる。インデントが表示されない。EPUBのインデントはスタイルシートで指定する。クラスを指定し
text-indent: 1em;
で指定すると、段落の行頭が1文字分字下げされる。ところが、bREADERではスタイルシート内の「text-indent」の指定は無視するようで、字下げされない。その代わりに、段落間が広がるのである。段落の頭に全角の空白スペースを挿入するしかないのであろうか。
同じように行間もスタイルシートを反映しない。スタイルシートは
line-height: 1.6em;
とかで指定すると、テキストの1.6倍で行送りされる。em値ではなく、パーセントで指定することもできる。bREADERでは行間を広げる方法は、画面をピンチアウトする。横にピンチアウトすると行間が広がり、縦にピンチアウトするとテキストサイズが大きくなる。行間も行長も数値での指定はいまのところできないようだ。横組みの場合は逆になる。
bREADERのページにある「ePub形式の対応」という部分には
※ePubファイルのテキストの表示とマージンに係わる基本的なcss属性をサポートしています
※スタイルシートを用いたカスケーディングも可能です
と書かれているが、具体的なことは「マージンに係わる基本的なcss属性」のみであり、それ以外のCSSの指定には対応していないのかもしれない。できればiBooksが対応しているCSS機能に対応して貰うと、iBooks用に作成したEPUBを同じように閲覧可能になる。
EPUB 3.0が登場してiBooksが対応すると、EPUBは高度な表現機能を持つことになるが、それでも現在のiBooks 1.2あたりに最適化して作成されたEPUBが同じように表示されるとは限らない。方法としてはiBooksに古いビューワーのエミュレート機能を持たせることだが、あまり期待できそうもない。サードパーティのビューワーであれば、古いバージョンのエミュレートする機能を持たせることは可能ではないだろうか。
縦組みで「縦中横」は対応しいてる。ただし、これは行っても詮無きことではあるが、3桁になると横には回転しない。印刷物では3桁でも長体にして無理やり縦中横にすることがある。「100」という数字はそのまま横のままなのである。EPUBでは縦組みと横組みの切り替えを行うので
縦中横禁止
でテキストを作成するべきではないか。少なくとも、3桁以上の半角数字は全角文字に置き換える必要がある。そのチェックの手間を考えるのであれば、いっそ全面禁止にするほうがスッキリしていいかもしれない。
ルビの指定はどうなっているのだろうか。EPUBのルビ指定は、2つの方法がある。1つはXHTMLのルビタグをそのまま使う方法である。ただし、現在はiBooksもStanzaも対応していない。そこでiBooksやStanzaではルビタグに対してスタイルシートで位置指定を行う。インラインテーブルでボックスを作成してその中にルビ文字を配置する。
この方法で作成したEPUBをbREADERで開くと、ルビ文字の後ろで改行されてしまうのだ。それでは、ということでスタイルシートを使わずにXHTMLのルビタグだけでルビを指定してみた。その場合は、ちゃんとルビとして表示されるのである。ただし問題があった。それは横組みの場合である。親文字よりルビ文字の文字数が大きいとき、最初の1文字しか表示されないのである。縦組みでは問題なく表示されている。
*iPadでスタイルシートで作成したEPUBのルビを表示する。
*同じEPUBをbREADERで表示する。ルビの後ろで改行されてしまう。
*XHTMLで指定したルビ。肩付きで表示されている。2桁の縦中横にも対応。
*XHTMLで指定したルビ。横組み表示。「昔」のルビが「む」だけになっている。
iPhoneアプリとしてはEPUBの縦組みビューワーは、いまところbREADERしかない。望みたいのは、iBooks互換機能だろう。iBooks用に作成したEPUBがiBooksと同じように表示され、しかも縦組みでも表示できるとなれば普及するのではないか。サンプル用の限定版はiBooksで読み、フルバージョンはbREADERで読むようにするという使い分けも可能かもしれない。
iPhoneのiBooksでは明朝体が使えない。iPadは内部に明朝体を持っているが、本文にパラグラフタグを指定すると、ヒラギノ明朝を指定しても無視されてしまう。しかしbREADERは内部に明朝体フォントを持っているので、iPhoneでも明朝体で表示できる。iPhoneで明朝縦組みEPUBはいまのところ選択肢がない。bREADERの今後のバージョンアップに期待したい。
◆bREADER[インフォシティ]
http://iphone-ipad-apps.com/breader.html
◆bREADER - 青空文庫[iTunesプレビュー]
http://itunes.apple.com/jp/app/id411884081
なお、今月17日に東京でEPUB作成セミナーを開催します。
EPUBのルビの作成方法を徹底的に解説する他、
EPUBのアドバンストな作り方を取り上げます。
詳しくは下記より。
◆インクナブラ電子書籍作成実践セミナー:ワンランク上のEPUB作成講座
http://www.incunabula.co.jp/110217/
ラベル:bREADER
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