2011年01月31日

アマゾン、プラットフォームでデファクトになる強み

 アメリカでは電子書籍は完全に成長期に入った。アマゾンのKindle電子書籍の売上が、アマゾン内でのペーパーバックの売上を追い越したのだ。アマゾンで書籍を買うユーザーの多くがKindle eBooksを選択している。「電子書籍で十分」と考えるユーザー層は確実にキャズム越えし、アーリーマジョリティをカバーしていると考えられる。

  昨年度のアマゾンの決算報告が発表された。第四4半期に過去最高の129億ドルを売り上げた。決算報告はKindle eBooksの成長ぶりにも触れているが、アマゾンらしい発表の仕方になっている。CNN.co.jpの記事を読むと報告では2010年度に

Kindle向けの売上がペーパーバックの売上を超えた


という。アマゾンが販売しているペーパーバックの売上は公表されていないし、Kindle eBooksの売上金額も公表されていない。Kindle eBooksの売上が越えたにしても、実際の販売部数も不明であり、具体的な売上金額は明示されていない。公表できない理由があるのだろうか。もちろん公表しない方が、憶測が飛び交って話題性は高くなる

 また、合わせて今年の統計として

ペーパーバック100冊に対しキンドル用書籍115冊が売れている計算


ともアナウンスしている。Kindle売上がペーパーバック売上を越えた統計は昨年のものであるにもかかわらず、冊数が越えた期間は今年のごくわずかの期間での統計ではないか。アマゾンの発表をそのまま読むと、昨年、Kindle eBooksがペーパーバックの売上を越えて、冊数的に15%増しという錯覚を誘っているようだ。

 アマゾンのKindle eBooksのページを開いてみると、トップセラーの大半はマス・マーケット・ペーパーバック化されている書籍であることがよくわかる。販売価格帯は

4ドルから8ドル

程度のものが多いが、ペーパーバックの販売価格と比較してそれほど安いわけではない。たとえば日本でも翻訳されている「ドラゴン・タトゥーの女」はペーパーバック化された書籍は「7.99ドル」で、Kindle eBooksは「7.00ドル」となっている。電子書籍だから安いということは全くない。

 さらにスティーグ・ラーソン著のミレニアムシリーズの第二部「火と戯れる女」は「7.00ドル」だが、第三部の「眠れる女と狂卓の騎士」は「11.99ドル」となっている。どうやらアメリカでマス・マーケット・ペーパーバック版が発売されていないためらしい。電子書籍の販売価格の根拠のなさがよくわかる。つまり売れる値段で売るのが正解なのだ。

 当初話題になった新刊ハードカバーKindle化の「9.99ドル」という価格はトップセラーにはほとんどない。日本の文庫や新書に当たるマス・マーケット・ペーパーバックの以外の書籍も販売価格は概ね10ドルを超えており、紙の書籍価格に比較すると値引率は極めて小さい。

 つまり、Kindle eBooksでは現在の新刊書籍ではなく、ペーパーバック化されるような既存書籍がトップセラーなのである。そして値引率はそれほど大きくはない。価格だけを考えれば、ペーパーバックをユースドで買う方が安いのである。にも関わらず、Kindle eBooksが売れている。ユーザーが紙の本ではなく、電子書籍を選択して買っていることは確実といえそうだ。

 電子書籍の普及の初期には「廉価」であることで消費者に電子書籍を惹起したが、普及が本格的になり電子書籍マーケットが成長しはじめたので、「廉価」で売る必要はなくなったのだ。おそらくこれから高いKindle eBooksが増えていくのではないだろうか。

 昨年までに販売されたKindle本体は、一千万台を越えていると考えられるが、Kindle eBooksはKindle本体で読まなくても、iPhoneやiPadでも読めるし、さらにAndroidでも読める。デバイスに制限されず、Kindleビューワーとネットワークさえ繋がればKindle eBooksのダウンロード可能だ。電子書籍配信プラットフォームとしては、Kindleは最強になったのだ。

 電子書籍を選択したユーザーのほとんどは紙の本に戻らない。プラットフォームでデファクトになれば、ファイルフォーマットにも縛られず、価格を下げる必要もない。日本でもいずれそうなる。プラットフォームでデファクトになれれば、あとはドンドンと配信してアマゾンのようにプッシュすればよい。はてさて、日本で配信プラットフォームを握るのはどこだろうか。


◆電子書籍売り上げがペーパーバックを上回る 米アマゾン[CNN.co.jp]
2011.01.30
http://www.cnn.co.jp/business/30001650.html


◆Kindle eBooks Bestselling[Amazon]
http://www.amazon.com/Kindle-eBooks/b/ref=sa_menu_kbo0?ie=UTF8&node=1286228011


◆ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上 [アマゾン]
http://amzn.to/gE2i0p


◆ミレニアム (小説)[Wikipedia]
http://bit.ly/fk7SaR


 


ラベル:アマゾン
posted by 上高地 仁 at 12:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース&トピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック