2011年01月26日

Discover21でEPUBの社内セミナーをする

 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンの小関さんから、社内セミナーを依頼をいただいた。セミナーのテーマはInDesignからEPUBを作成する方法である。皇居のほとりにあるイタリア文化会館の会議室で約3時間のセミナーであった。InDesignからの書き出し方だけでなく、EPUBを書き出すためにInDesignドキュメント作成の注意点なども踏まえて欲しい、ということでお話しさせていただいた。

 id_epub_bookimage100.gif 昨年、小関さんから『これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法』をお申込みいただいていた。それを読んだ上で、セミナーの依頼をいただいたようだ。EPUB作成の本はたくさん出回るようになったが、InDesignからの書き出しを詳しく解説したものは少ないからだろう。世間には

EPUBの作成でInDesignを使うのは邪道だ

というような意見もある。しかしWebサイトのHTML作成方法にさまざまな方法があるように、EPUBの作成も、コンテンツワークフローにしたがって最適な方法で作成すれば良い。EPUBの作成方法に正道も邪道もあるわけはない。



 さて、ディスカヴァー・トゥエンティワンといえば、日本での電子書籍ブームに火付けた『電子書籍の衝撃(佐々木俊尚著)』を発行した出版社として知られている。混沌とする出版業界の中ではリーディング・カンパニー的存在である。従来の出版の枠組みにとらわれないマーケティング手法を躊躇せず実行できる出版社の一つだろう。

 セミナーの依頼を受けたものの、しかしなぜいまさらEPUBなのだろう。しかもディスカヴァー・トゥエンティワンで、というのが偽らざる感想だった。EPUBはフリーのフォーマットとしては普及するだろうが、マネタイズには向きそうもないと思っていたからだ。わかりやすく言うと、金になるフォーマットにはほど遠いということだ。

 EPUBは国際規格、つまりデジュールだが、事実上の標準、つまりデファクト・スタンダードではない。デファクトにもっとも近いといわれているが、現在のところ、電子書籍リフロー形式の国際的なデファクト・スタンダードはアマゾンのキンドルで使われている「AZW」である。

 日本ではリフローのデファクトはシャープのXMDFだが、デファクトになっているのは主に携帯端末のみである。スマートフォンも含めて登場した電子書籍ビューワーでは、デファクトのファイルフォーマットは仕切り直しになっており、いわゆる電子書籍端末のデファクトはいまだ固まっていない。

 EPUBは、デファクトになるべく次期バージョンの3.0の仕様がすすんでいる。日本語対応を踏まえて仕様が拡張されても、デファクトになれるかどうかはわからない。IDPFにアップルやグーグルが参加したからといって、デファクトになるかどうかは別である。デファクトを決めるのは企業ではなく、ユーザーだからである。

 日本語環境では3.0の仕様がフィックスされ、拡張された仕様を実装したビューワーが登場しなければEPUBの先はわからない。おそらくEPUB3.0の仕様がデファクトになるというより、EPUB3.0を反映したiBooksあたりの実装がデファクトになるというの現実的な可能性ではないか。ユーザーに見えるのはIDPFが策定した仕様ではなく、ビューワーの動作だからである。

 概ねEPUBに期待する向きは、今年の5月といわれる3.0の動向を固唾をのんで(それほどではないか)見守っている感じである。仕様策定の先行きをみないとEPUB3.0に対応しても、フライングになることを懸念しているかもしれないが、EPUBに期待し採用したいと考えている出版社はいまのところ多くなさそうだ。

 現在、いくつかのEPUB2.0ベースのビューワーは登場するようになったが、既存のEPUB2.0で有償電子書籍の配信プラットフォームを構築する試みはあまり多くないはずだ。無償のEPUB配信サイトも増え普及しつつあるが、EPUBにDRMをつけて有償配信する試みは日本ではディスカヴァー・トゥエンティワンが初めてではないだろうか。

 それではディスカヴァー・トゥエンティワンはでEPUBをどのように使うのだろうか。極めて興味深い。InDesignからEPUBを書き出すのは難しくないが、実際にはビューワーの仕様がわからないと話が進まない部分もある。もっとも気になったのはどういうEPUBビューワーを使うのかということだった。

 たとえばルビはEPUB2.0ではXHTMLのタグで対応しているが、実際にはiBooksもStanzaも正しく表示できない。そうなると、CSSで指定することになる。CSSではインラインテーブルを使うのがもっとも確実だが、iBooksできれいにレイアウトしたルビを作成するとStanzaではベースラインがずれてしまう。もちろん、その逆も真でStanzaに最適化するとiBooksではレイアウトが変わってしまう。

 ちなみにInDesignのルビはそのままEPUBのルビにはならないが、InDesignのルビはタグとして書き出し、InDesignタグをXHTMLのルビタグに一括変換することもできる。ただ、InDesignのルビをタグとして書き出すと、不要なタグが多くなってしまう。多少手間が掛かるがエディタで変換できないことはない。あとはルビタグの仕様をCSSで指定すればよい。ついでに言うと、ビューワーを特定すれば、中付きと肩付きの使い分けも可能だ。


 ディスカヴァー・トゥエンティワンでは独自のビューワーを開発しているという。なるほど、それであれば、EPUB2.0でも対応可能だ。2.0ベースでもビューワーの機能で縦組表示させることはまったく問題はないし、ハウスルールに従って表示させるのであれば、3.0を待つ必要はない。

 InDesignから書き出す理由は簡単である。

最終データがInDesignデータ


だからである。つまり、紙版データをEPUB化するので、InDesignからそのまま書き出した方が効率的なのである。InDesignから書き出して、SigilでEPUBを編集すれば簡単にEPUBが作成できるからだ。紙の書籍と電子書籍を同時に発行するのであれば、InDesignから書き出して編集すれば、テキストを統一できることになる。



 EPUBビューワーはとりあえずiPhone用なのだそうだ。iPhoneに限定するのではあれば、InDesignで指定する段落スタイル名をルール化しておくと、共通のスタイルシートを使うことができる。つまり本文の段落スタイルを「body」にしておくと、スタイルシートの「p. body」を共通のものにすることで、すべてEPUBの体裁を統一できるのである。この方法だと紙の本の体裁が異なっていても、iPhoneでは同じように表示可能になる。

 また、InDesignではハイパーリンクを指定すると、EPUBでもリンクが設定できる。Webリンクはそのまま絶対パスで埋め込まれる。ページリンクは意味がないのできないが、テキストアンカーはSigilで少し手を加えると簡単に設定できる。目次ページを作成すれば、そこのテキストからリンク先に飛ばすことも可能だ。

 出版社は書店アプリを作成することで、複数の端末に対応したいと思っているようで、無償の書店アプリは花盛りである。しかし書店アプリはダウンロードしたいという魅力に欠ける。よほど読みたい本があればダウンロードするだろうが、そうでなければダウンロードさえままならないのではないか。

 しかし、ディスカヴァー・トゥエンティワンのEPUBビューワーは、別の捉え方をすると、書店ビューワーでもある。書店ビューワーをEPUBビューワーにするという発想は当たり前すぎて誰も気が付かなかったのだろうか。iBooksの真似をするのは、iPhoneでの電子書籍の配信では理になかった方法ではないか。敷居の高いXMDFではできなくて、公開仕様のEPUBだからのこそのメリットではないか。

 EPUBビューワーの書店アプリは、通常の書店アプリとは異なる性格を持たせることができる。つまり、DRMした有償のEPUB書籍だけでなく、無償のEPUB書籍も閲覧できるようすることだ。そうすると書店アプリとしてではなく、EPUBビューワーとして普及させることができる。この方法はiBooksと同じ方法なので、EPUBビューワーのできが良ければ、あっという間にブックカテゴリーのトップになれるのではないか。

 というわけで、ディスカヴァー・トゥエンティワンのEPUBビューワーの登場を楽しみにしたい。なお、公開されるEPUBビューワーで無償のEPUBが閲覧できるかどうかはわからないが、是非期待したいものである。


◆株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン
http://www.d21.co.jp/


◆『これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法』
http://bit.ly/gbOm9O

 
posted by 上高地 仁 at 10:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | Apple/Macintosh/iPhone | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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