2011年01月11日

売れる電子書籍はApp Store以外の選択肢はない #denshi

 電子書籍はいったいどのくらいの部数ダウンロードされているのだろうか。実際に売れていなければ日本で電子書籍が根付くことは難しい。昨年は電子化されて話題になった書籍も少なくない。実際にどのくらい売れたのかを調べてみた。

  電子書籍の中でもっとも売れたのは、『適当日記(高田純次著)』である。昨年末には12万部のダウンロードに達した。10月に引き続き、年末にも115円キャンペーンをしたためだろう。紙の本は3万5千部にもかかわらず、ダウンロード数は3倍以上になった。紙の本は定価1,000円。電子書籍の定価は350円だが、実際には115円でのダウンロードがほとんどだろう。

 続いてよく売れたのは『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(岩崎夏海著)』であった。同じくダイヤモンド社のベストセラーで、紙の書籍でも昨年もっとも売れた本になった。年末に公表された数値では紙版が192万部、電子書籍が10万部の合計202万部となっている。10万部オーバーはダイヤモンド社のこの2冊だけである。紙の書籍は1,680円で、電子書籍は800円。

 作家が取り組んだ先進的な試みとして取り上げられた『歌うクジラ(村上龍著)』は、iPad版を先行で販売。7月16日に発行されていて、Webで調べる限り最新のダウンロード数は1万。10月1日のものであった。現在でもApp Storeのブックカテゴリーのトップ100に掲載されているので、引き続いて売れているようである。なお、紙版は10月21日に発行されていて、紙版は上下巻合わせて3,360円、App Store版は1,500円。最近はAndroid版も販売されている。

 『歌うクジラ(村上龍著)』は電子書籍アプリ作成ツールとして良く使用されているdotBook、DReader、MCBookを使わずに独自開発したアプリとなっていて、横組み専用でテキストのリフローもできない。にも関わらず、1,500円という価格で販売して1万部を販売している。もう少したって、キャンペーンで値引き展開すれば、部数はもっと伸びるだろう。いままでコストを掛けていた新書化、文庫化のダウンサイジングがいつでもできてしまう。したがってポイントは値引き販売のタイミングがダウンロード数を増やす鍵になりそうである。

 昨年話題になった哲学書『これからの「正義」の話をしよう(マイケル・サンデル著)』は、紙版の発行部数は60万部。電子書籍版のダウンロード数は9月末付けのものしか公表されていなかった。早川書房の公式ツイッターによると、ダウンロード数は1万5千だという。初回のキャンペーン(1,600円 → 900円)が終わった時点でのダウンロード数だが、おそらくそれ以後は大きく伸びていないのかもしれない。ただし、こちらもまだApp Storeのブックカテゴリーのトップ100に掲載されている。

 紙版が販売されている場合、電子書籍化すると、概ね5%くらいのダウンロード数になる。『これからの「正義」の話をしよう』は比率から言うと、あまりダウンロード数が多くないが、片手間で読む内容ではないので、iPhoneユーザーにとっては敷居が高いのだろう。

 今後App Storeでの電子書籍プレーヤーが増えると、電子書籍のダウンロード数がどうなるのかはわからない。小さいパイを分け合ってしまうのか、あるいは相乗効果でマーケットが大きくなるのかは、まだ見えない。ただ、一度ダウンロード購入すると、紙の本を買うよりダウンロードしたくなるので、マーケットは広がると考える方が自然だろう。

 先日、大塚商会主催のAppleCLIP EX in KANSAIで「ビジネスを変える!Appleプロダクツ」というセミナーに参加した(講師は林 信行氏)が、それによるとiOSは昨年の9月時点での販売数は、全世界で

1億2千万台

と及ぶという。日本での販売比率はおよそ6%程度らしいので、iPhone、iPod touch、iPadの合計は、700万台を越えていることになる。

 App Storeを使うメリットは、日本ではもっとも端末台数の多いマーケットで展開可能ということだ。ただしそれでも700万台に対して10万部を売るには、70人に一人の割合でダウンロードして貰う必要がある。iPhone、iPod touch、iPadユーザーの60人に一人が『適当日記』や『もしドラ』を買ったわけである。この数値をどのように見るのかは人によって異なるだろう。ただ、電子書籍も書店に入った客のうち70人に一人が買う本が登場するようになったことは確かといってよい。

 将来的に電子書籍の配信プラットフォームがどうなるのかはわからないが、今のところ、AppleのApp Store以外の配信では販売数を増やすことはできそうもないのではないか。無料のゲームやツールでApp Storeのダウンロードに慣れたユーザーは、最初はおそるおそる少額のダウンロード行い、そのうち、ダウンロードでのカード決済に鈍感になっていく。

 ことしは10万部越えの電子書籍は何冊生まれるのだろうか。もし生まれるとしたら、やはりApp Store以外では考えられそうもない。電子書籍を売るのであれば、App Storeで展開することが、いまある唯一の選択肢ではないだろうか。



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ラベル:App Store
posted by 上高地 仁 at 12:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | Apple/Macintosh/iPhone | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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