電子書籍と一口に言っても、立場によって捉え方は異なる。従来の出版業からの視点で考えると、従来の紙の書籍をデジタル化し、モバイル端末で閲覧できるようにすることだろう。しかしそれだけではない。いままでの出版流通の仕組みでは日の目を見ることがなかった書籍コンテンツも電子書籍では手軽に配信可能になる。電子書籍によって、セルフ・パブリッシングの需要は確実に膨らんでいく。
アメリカでの電子書籍はAmazonのKindleブックスがダントツで独走している。しかし日本ではKindleブックスは始まっていないし、始まったとしても定着するには時間がかかるに違いない。AppleのiBookstoreもEPUBの次期バージョンを睨みつつサービスを開始することになれば、こうした黒船サービスは早くても今年の後半にならなければ本格的には動かないのである。
そんな中、日本では出版社系のストア型アプリで電子書籍を展開する動きが活発になってきている。電子書籍をアプリとして配信するとAppleの審査が必要になるため、出版者側から言えば、アプリ型はアプリが却下されるリスクがあり、その問題は決して小さいものではないからだ。
とはいえ現在、携帯端末での配信を除いてもっとも売れている電子書籍は、
iPhoneアプリ型
なのである。将来的にストア型が普及するとしたら、出版社が書店で売れ筋の新刊本を電子化して紙と同時に販売しなければならない。それをしたとき紙の書籍の販売数がどうなるのか読めないのであれば、ルビコンを渡る決意は間違いなく鈍る。また、電子書籍は書店での販売と異なり、プッシュシステムが不可欠であり、きめ細かいプッシュのプロモーションノウハウは既存の出版社にはない。いまのままだと出版社系の多くのストア型は、KindleやiBookstoreに太刀打ちできそうもない。
既存の紙の書籍であれ、いままで紙の書籍になっていなかったものであれ、電子書籍として販売するのであれば、iPhoneアプリにするのがもっとも確実ではないか。iPhoneアプリであれば、Appleの審査さえ通れば、誰でも電子書籍を発行できるのである。
iPhoneアプリ作成サービスにはよく利用されているものに
dotBook(ボイジャー社)
DReader(ダイヤモンド社)
MCBook(モリサワ社)
がある。これらは良くできたサービスであり、電子書籍アプリとしても高機能である。価格もそれほど高いわけではない。サービスの費用より間接的な人件費の方がもっと掛かるだろうから、アプリ変換費を支払い、ロイヤリティとしてレベニューシェアを支払っても、リーズナブルなサービスである。
しかし電子書籍を販売するとき、もっとも重要なのは、電子書籍アプリを安く仕上げることではない。見込客に電子書籍アプリ化されていること、iPhoneから直ぐに買えることをプッシュすることなのである。そのノウハウこそが電子書籍を販売する側にとって必要なことではないのか。
「SakuttoBook(サクッとブック)」のウリは、
年間の費用なし
アプリ変換料なし
ロイヤリティなし
である。既存のサービスよりもっと安くiPhone電子書籍アプリを作成するツールである。したがって既存のサービスより作成費用を廉価にしたところで、電子書籍ビジネスが成功するかどうかはあまり関係がない。
しかし実際にプロモーショントライアルするためには、アプリ変換費用は廉価な方がいいのではないか。少なくともランニングコストは考えないようにしたい。何冊のiPhoneアプリを作成しても、外部に支払うコストが小さくなれば、思い切った試みにトライすることが可能だ。
「SakuttoBook(サクッとブック)」のネックは中身がPDFだと言うことだ。つまりリフローできないし、縦組みを横組みにもできない。ただ実際、iPhoneで電子書籍を読んでいる限り、テキストサイズを途中で変更することはあまりない。いままでiPhoneアプリの電子書籍でデフォルトのテキストサイズを変更したいと思ったことは一度もないので、最初に最適化されたサイズで作成されていれば、実用性の問題はあまりないと感じている。
もちろん、電子書籍に固定概念を抱いている人から見ると、PDFの電子書籍は邪道かも知れない。電子書籍ならでは機能は不可欠だというだろう。しかしまだまだ日本語の組版にはハウスルールもあるし、Adobe Japan1-6にもない外字の処理、カスタマイズされたルビの打ち方などの問題もある。今のところPDFに分がある部分もあるのである。PDFであればiPhoneサイズでもレイアウトを工夫することもできる。電子書籍といっても、テキストだけのものはこれからは少なくなっていくのではないか。
「SakuttoBook(サクッとブック)」は誰でもiPhone電子書籍アプリが作成できるようにしている。PDFを上書きして、Xcodeをビルド(アプリ変換)するだけである。あとは目次の設定ファイルを編集するくらいである。
中身がPDFであっても、ガンガンとiPhone電子書籍アプリを発行していただきたい。そしてプロモーションスキルを磨いていただきたいのである。売れるノウハウが見えれば、他のツールを使って頂くことも可能だし、AmazonやAppleが店を開いても、全然怖くないはずだ。
◆これだけでできるiPhone電子書籍アプリをローコストで作る方法
SakuttoBook(サクッとブック)
↓ ↓
http://www.incunabula.co.jp/book/Sakutto/
「サクブ」と呼んでやってください。
ラベル:iPhone
【関連する記事】
- 手のひらタブレットiPad miniで世界征服を狙うアップルのiOSワールド
- Xcode4本をiBooks Authorの読み上げ機能で文字校正してみる
- Xcodeのアイコン用のアクションファイルを作成する
- Mac OS X Lion、Ethernetカスケード接続の怪
- Mac OS X狙いのマルウェア「Flashback」はフェーズ6
- iPadでペーパーレス化が進み、生まれるマーケット
- スティーブ・ジョブズ伝記はジョブズの遺言か
- ジョブス亡きアップルの展望はいかに〜死せるジョブズ、生ける我々をまだまだ驚かせる..
- iPad3を予感させるソフトバンクiPad2キャンペーン
- iTunesに欲しいiOSシミュレータ
- EPUB2とEPUB3でするインラインルビ作成講座、組み込みアプリにする
- 『印刷営業、明日はどっちだ』メタデータリジェクトされる
- 「InDesignの鉄則」アプリ、既存アプリからリプレース
- 組み込み型アプリ内課金、Best RegardsとRegardsの違い #den..
- iPhoneアプリ内のPDFをPaypal決済にしました
- 『InDesignからEPUB』iPhoneサイズ版を追加しました。
- App Storeプロモーション、2つの方法を売り込まれる
- Illustrator使いこなしの鉄則、iPhoneアプリ化できました。
- SakuttoBookでする情報の非表示と解像度のカスタマイズ
- 『Illustrator使いこなしの鉄則』をiPhoneアプリにする