2010年12月09日

PDFをiPhoneアプリ化すればステータスはアップする

 iPhoneでPDFを読むのは簡単だ。iBooksだけでなく、GoodReaderなどのスグレモノのビューワーもある。コンテンツとして配信する場合、実はPDFでも十分ではないか。Googleも「Google eBooks」ではPDFにDRMして有償で配信する。コンテンツに価値があれは、PDFでも売り物になるのは確かである。

  しかし一般的にPDFでは売り物になりにくい。PDF作成ソフトはタダのものもあるし、誰でも簡単に作成できるのでファイルフォーマットとしてのPDFは価値は小さい。iPhoneアプリ用PDFを作成するには、それなりの注意点は必要ではあるが、コンテンツの価値を高めるにはPDF以外のファイルフォーマットの方がよい。iPhoneでも中身はPDFであっても、iPhoneアプリ形式にすればコンテンツの価値は高くなる

 PDFをそのままiPhoneアプリにすればいいわけではない。Appleはアプリの内容を審査するので、アプリとして配信するコンテンツ自体に価値が必要だ。審査に通らないコンテンツはPDFのまま配信するしかないが、書籍としての価値が認められれば、電子書籍はPDFではなくアプリにした方がいい。

 実際にiPhoneアプリ作成ソリューションの中には、中身はPDFであったり画像であったりするものは少なくない。雑誌のビューワーでは画像が使われているし、Adobeの「Digital Publishing Platform」も中身は画像のままである。価値があるのは中身のファイルフォーマットではなく、iPhoneやiPadのアプリ形式であるからだ。

 iPhoneアプリを作成するのはハードルが高い。Objective-Cを学んで使いこなすのは誰にでもできるわけではない。しかしそこで思うのは、

プログラムの基本的な部分を作成しておき、
PDFを挿入するだけ


でいいようにすれば、PDFのiPhoneアプリ化は難しくないのではないか、ということだ。つまり最初からiPhoneアプリの半完成品を用意しておくのである。

 iPhoneアプリを作成するには、まず「Apple Developer」に申し込み、Xcodeなどの開発用アプリケーションを取得してアプリを開発する。アプリを登録するには有償の「iOS Developer Program」に申込む必要がある。いずれにしても個人でiPhoneアプリを作成できる。Androidでは「iOS Developer Program」のような費用はかからない(Androidでもただではない。多少は費用がかかる)が、日本では今のところ、iPhoneの稼働台数は多いので、マーケットはiOSの方が大きい。売れるアプリが開発できれば、コストは十分見合うだろう。

 一から開発すると手間がかかるが、iPhoneサイズのPDFを差し替えるだけのアプリにしておくと、ハードルは極めて低い。目次の作成やリンクの設定などは必要になるが、別ウィンドウであれば、動画も挿入できそうだ。おそらくPDFで今のままで貼り込んだFlash動画(Flashでなくても)を再生できれば、PDFだけのコンテンツが増えたに違いないが、残念ながら、iPhone内のPDFはいまのところ動画は再生できない。

 もし、電子書籍アプリ用コードのテンプレートを用意すれば、iPhoneアプリ形式でコンテンツを配信することは極めて簡単になると言えないだろうか。中身をPDFにすれば、レイアウトも自在。iPhoneサイズでレイアウトすれば閲覧になんの問題もないはずだ。Wordからでも、iPhoneサイズでレイアウトすれば、そのままiPhoneアプリにすることができるのだ。iPhone用限定にすれば、リフロー形式は考慮する必要がない。

 しかし現在iPhoneアプリ形式の電子書籍が普及しないのは、iPhoneアプリの電子書籍作成ソリューションが、価格的にこなれていないないからだろう。とても個人レベルでは手が出ない。中には個人には販売しない電子書籍作成ソリューションもある。

 また個人だけでなく法人であっても、イニシャルコストだけでなく、月々の費用も発生したり、売上からマージンがカットオフされるので、トライするにはリスクがありすぎる。要するに毎月の固定費が払える可能性も見えないまま、電子書籍に参入するのは無謀だといえる。

 現在、日本の電子書籍環境は日々変化している。しかしその中でもっとも売れている電子書籍はiPhoneアプリ形式なのである。いずれストア型で展開している電子書籍が爆発的に売れるようになるにしても、ストア型はビューワーのインストールが必要であり、購入までのステップが複雑になる。どうしても欲しいコンテンツでなければ、ストアのビューワーをインストールするのは面倒だ。おそらくストア型の電子書籍書店で生き残れるのは上位3社くらいで、あとは専門化していくことになるのではないか。

 その点アプリ形式のタイトル型であれば、ビューワーに依存しないので、ダウンロードのステップは至ってシンプルだ。使いなれたAppStoreからすぐにダウンロードできる。アプリ形式で配信する方が配信数は確実に増やすことができるはずだ。iPhoneで配信するのであれば、アプリ形式がもっとも確実である。

 PDFを使うメリットは、中身は電子書籍でなくてもかまわないことだ。PDFにしていればどのようなコンテンツでも配信できる。書籍である必要はない。販売促進物をiPhoneアプリして配信することも簡単なのである。コンテンツを販売するにしても、プロモーションとして使う場合でも、iPhoneアプリ形式は使い方次第である。もちろん完全な商品カタログは審査に通りそうもないが、コンテンツにある程度の分量があり、独自性と公共性は必要だろう。プロモーション用の小冊子などは工夫次第でアプリ化できそうである。

 電子書籍であれば、iPhone用のプログラムはそれほど難しくないだろう。PDFを差し替えてビルドするだけのテンプレートは作成できるのではないかと思うのだ。そういうiPhoneアプリ用のテンプレートを提供したいと現在模索中である。個人であっても作成した「書籍」をiPhoneアプリに簡単にできるようになれば、電子書籍はさらに普及するのではないだろうか。


◆これだけでできるInDesignからPDFの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_pdf/

 
ラベル:iPhoneアプリ
posted by 上高地 仁 at 10:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍、明日はどっちだ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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