2010年12月02日

『これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法』初版完売す #denshi

 日本の電子書籍マーケットは立ち上がったのかと考えると、結果が見えるまでにはまだもう少し時間がかかりそうである。旧来のガラケーでのケータイショウセツやケイタイコミックは順調そうだが、それ以外の既存の出版物が日本の電子書籍マーケットでどのような方向を向いていくのかは誰にもわからない。当分、複数の電子書籍ストアの戦国時代が続きそうである。

  電子書籍の話題が盛り上がってきたのは、今年の5月くらいからである。おそらく業界関係者で日本の電子書籍マーケット隆盛の匂いをかぎつけた人の比率が、その頃キャズム越えしたのではないか。出版や印刷関係で、紙の出版物が低迷する中で、新しいマーケットとして電子書籍が立ち上がると感じた人が急速に増えたに違いない。

 そういう中で、正体の掴みにくいファイルフォーマットであり、いまだ世間があまり知らないファイルフォーマットとして

EPUB

があった。いまは丸裸になってしまったが、当時は正体不明であった。そしてEPUBがどうやら電子書籍のデファクトになるのではないかという予想が、EPUBへの関心度を大きく高めていった。

 EPUBは

XHTML / XML + CSS

と言われるように、Webの記述方式から派生した。簡単に言うとブラウザで観るように、電子書籍をモバイル端末で閲覧するためのフォーマットである。要するにHTMLとCSSがわかればそれほど難しくはない

id_epub_bookimage100.gif とはいえ、EPUBの書き出し機能がInDesignに用意されていることが事態を少し複雑にした。いままでInDesignで作成したドキュメントをHTMLに書き出したこともないユーザーがInDesignからのEPUB書き出しを試みた。書き出してみると、どうしようもないレイアウトになり、どうすれば、InDesign上のレイアウトをEPUBに反映できるのかについて関心が高まった。

 かくいう私もその一人で、InDesignから書き出したEPUBをSigilで編集することで、EPUBを正体を知ることができた。Sigilで編集したとき、はじめてEPUBがHTMLであることを得心したのであった。そこで、InDesignからEPUBを書き出してSigilで編集するノウハウを書籍にまとめ、セミナーを開催した。そのときの書籍が『これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法』である。少部数しか印刷せず、セミナーテキストとして定価12,600円で販売したが、初版が約4ヶ月強で捌けたのである。

 EPUBはこれからどうなるのかわからない。流れ的には、個人出版のフォーマットして普及していきそうである。Dreamweaverが使えるのであれば、EPUBを作成するのはそれほど難しくはない。たとえば

日本語のePub形式の電子書籍を投稿・共有できるサイト ePubs.jp

というサイトではユーザーが自由に作成したEPUBファイルをアップすることができる。閲覧者は無料でEPUBを読むことができる。EPUBの再生回数がもっと多い電子書籍は

iPhoneiPad使いこなしBooks

というビジネスマン向けのiPhoneアプリ活用本のEPUBファイルで、現時点(2010.12.2)での再生回数は「4658」である。デフォルトではFirefoxのプラグインで開くようになっているが、EPUBファイルをダウンロードしてiPhoneやiPadのiBooksで開くこともできる。

 フリーの電子書籍配布形式として、EPUBは確実に浸透しつつあるといってよい。作成するには多少の敷居の高さはあるにしても、いずれ誰でもが簡単にEPUBを作成できるようになるだろう。

 ただし配信プラットフォームでEPUBが主流になるかどうかは別である。アマゾンはもともとIDFPの創設メンバーなのに、EPUBを使わずに、同じメンバーのアドビのDRM技術を使って、独自のファイル形式で配信した。プラットフォームでユーザーを囲い込むためには、船頭の多いデジュールの汎用ファイルフォーマットの採用は、ややこしくするのも事実だろう。アップルにしてもiBooksでEPUBを使うにしても、DRMがかかる以上、それは別物だと考えた方がよい。

 配信プラットフォームは別として、無償や少額で配信されるEPUBファイルではDRMは不要であり、草の根的にEPUBは使われていくことは確実ではないか。HTMLにしたついでやその代わりにEPUBにすることは可能だからだ。

 世の中にはHTMLは理解できない人も少なくない。むしろタグを読めない人の方が多いはずである。そういう人はEPUBファイルを作成したくても、作成できないことなる。手軽に電子書籍を配信する方法としてEPUBがあっても、サクサクとEPUBを作成できる人はそれほど多くはないのである。そこにはまだまだ需要があり、ビジネスチャンスがあるに違いない。

 もちろんEPUBをInDesignから書き出す必要はない。しかし、スタイルシートを使いこなせないのであれば、InDesignで書き出す方が手早い。InDesignは段落スタイルをそのままスタイルシートに変換する。さらに、目次も作成すれば、EPUBの目次に変換して書き出すことができる。HTMLやスタイルシートを完璧マスターしたくないのであれば、InDesignから書き出す方が手っ取り早いのである。

 というわけで、『これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法』は再版となった。いまだにEPUBの作成ができないあなた、今からでも遅くはない、どのような方法であっても、EPUB作成のノウハウは身につけるべきである。課金コンテンツではなく、課金しないコンテンツは、パーソナルユースを中心に大きく広がっていくからである。そのときにはEPUBはスタンダードのファイルフォーマットになるに違いにない。


◆日本語のePub形式の電子書籍を投稿・共有できるサイト ePubs.jp
http://epubs.jp/


◆これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_epub/


◆これだけでできるInDesignからPDFの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_pdf/



◆InDesignからEPUBの電子書籍を作成する方法がiPhoneアプリになりました
InDesignからEPUBの電子書籍を作成する方法[iTunesプレビュー]
 ↓   ↓
http://bit.ly/hoLZHS

st07.gif

 
 
ラベル:InDesign,EPUB
posted by 上高地 仁 at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | InDesignとEPUB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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