2010年11月30日

ビジネスコンテンツのモバイル化を狙え

 電子書籍の話題は、主に出版物を中心に展開してきた。紙の書籍を電子化した電子書籍そのものは昔からあったが、飛躍して普及することなく推移した。ここに来て大きく進展を見せているのは、コンテンツのモバイル化が現実のものになったからだろう。Kindleの爆発的な普及は、3G回線で電子書籍をダウンロードできるようになったことにある。コンテンツのモバイル化に、大きな要因があることは間違いない。

  電子書籍はモバイル化が不可欠である。書籍をドラえもんのポケットのようにいつでもどこでも取り出して読むには、電子書籍化するしかない。そうすれば端末さえ持っていれば、場所や時間にしばられずに電子書籍を読むことができる。読みたくなったとき、すぐに読むことができるのが電子書籍のメリットだろう。ダウンロードすれば移動中の地下鉄でも、ロッククライミング中にでも読書可能だ。

 モバイル化によって変貌するのは、「書籍」だけではない。いままで印刷していたものすべてがモバイル端末で閲覧されていくようになるのではないか。全てではないにしても、モバイル端末に配信することで、いままで印刷物が果たしていた情報の閲覧という役割を担う部分は決して小さくない。

 モバイル端末はネットに接続できる。したがって、ネット上の情報を得るのは難しくない。しかし今のところ、モバイル端末に最適化されたWebサイトは少ない。最適化されていなくても、情報が整理されておらず、読みやすいとは言い難いページも多く存在する。整理された情報を見つけるのは簡単ではないし、記載されている内容の責任の所在も明らかではない場合もよくある。

 欲しいときに欲しい情報をと思っても、表現力が劣っていれば、情報は伝わらない。ビジネスでは的確に欲しいときに、欲しい情報をプッシュすることが必要になる。商品やサービスでは、まず知って貰うことが重要であり、知って貰うためのアプローチとして印刷物がある。折り込みチラシやダイレクトメールはその最右翼である。

 Webでのマーケティングはアクセスを集めることが最初の課題だが、集めたアクセスに対して十分な情報をプッシュしなければならない。コピーライティングのヘッドコピーが次の文章を読ませるために存在するように、閲覧者の関心度を高めていくことが、ビジネスになっていく。

 情報をプッシュする方法として、モバイル端末にファイルをダウンロードする方法も1つではないかと思うのである。モバイル端末のメリットは手すきの時間に閲覧できることがメリットになる。ダウンロードして貰うことで、リーチが広くなるのだ。PCの前に座っていなくても、プッシュが可能になる。

 企業内の情報は、PCではなくiPadなどのタブレットに集約するほうが使い易い。古いデータや資料もiPadがあればいつでもアクセスして閲覧できる。持ち運べば、外でも簡単にアクセス可能だ。起動する必要もなく、すぐにテキスト、音声、動画と多用なメディアにアクセス可能になる。どだい、ビジネスマンが持つPCはたいていが、ネットの閲覧とメールの受送信くらいしか使っていないので、iPadに置き換えても十分なのである。

 さらにiOS4では「iPhone(iPad、iPod touch)を探す」機能が追加されたので、iPhoneやiPadを紛失しても情報の漏洩を心配する必要は限りなく小さくなる。つまり社外秘のデータを安心してどんどんコピーできるのだ。PCを持ち出すよりも安全だろう。PCだったら、ハードディスクだけを取り出してコピーし、もとに戻すしておけるが、iOS4では本体を壊さないとディスクは取り出せない。

 こうなるとモバイル端末により多くのデータを集約するようになることは火を見るよりも明らかである。iPhoneやiPadで閲覧可能な形式でドキュメントを作成すれば、すべての情報はモバイル端末に集約化され、ユビキタス化される。しかも、回線の接続状況を気にせずオフラインでもアクセスできるようになる。

 これからは書籍だけでなく、商業印刷物の電子化が進んでいくにちがいない。そのときに重要なのは、モバイル端末で閲覧しやすいレイアウトをすることである。EPUBのようなリフロー形式だと1ファイルで済むが、iPhoneのような画面の小さい場合は、リフローさせるより、iPhoneのサイズでレイアウトする方が読みやすい。画面サイズに合わせてレイアウトすれば、ドキュメントの作成は簡単である。

 そうなるとビジネスユースのモバイルデータはPDFで十分ではないかと思うのである(いまのところ音声は動画は不可だけどね)。iPhone用とiPad用を作成すればよいだけで、2つのレイアウトを作成しても今ではそれほど手間はかからない。ネット上にPDFをおいておき、iPhoneやiPadのSafariでダウンロードして貰えばよい。

 印刷物を作成するとき、モバイル用データはオプションとして提案することはこれからは当たり前になる。社内用であれ、社外配布用であれ、フライヤー程度のものであっても、モバイル用のコンテンツは印刷会社の営業リストにくわえるべきものである。パーソナルな自炊ブームの後は、ビジネスコンテンツのモバイルブームがやってくるに違いない。


◆これだけでできるInDesignからPDFの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_pdf/index_M.html

 
ラベル:モバイル
posted by 上高地 仁 at 10:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | Apple/Macintosh/iPhone | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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