もともとiPhoneにしてもiPadにしても、モニタで閲覧するためのデバイスである。表示するカラーは
RGB
が基本だ。RGBデータを表示できればいいのであって、必ずしもカラーマネージメント機能が必要というわけではない。しかしアップルはデスクトップ機ではディスプレイのプロファイル機能を搭載し、カラーマネージメントには取り組んできた──が、Mac OS Xのディスプレイキャリブレータで設定するのは
ガンマ
ホワイトバランス
だけであり、カラースペースは対象外である。ディスプレイキャリブレータで補正したデータがICCプロファイル形式であるにすぎない。カラースペースをカラーマネージメントするには、管面の測色が必要なので、OS搭載の機能ではちと難しい。
アップルは昔からガンマ値に「1.8」を使ってきた。ガンマ値が「1.8」なのは、プリントアウトした印刷物のドットゲインがガンマ値「1.8」に近いからである。プリントアウトした結果とモニタ表示の結果を近づけるために、AppleRGBのガンマは「1.8」なのである。
しかしiPhoneやiPadでは、ドキュメントのプリントにはあまり考慮してないようだ。最近はiPhoneやiPadで利用できるプリンタドライバも増えてきているが、これらは基本的にRGBベースのプリンタであり、画面の表示をそのまま出力する場合はそれほど問題はない。
問題なのは、CMYKベースのドキュメントである。通常iPhoneやiPadではCMYKは扱わない。扱うとすれば、CMYKのPDFである。iBooksもPDFに対応しているし、GoodReaderなどの互換のPDFビューワーはたくさんあり、CMYKのPDFはそのまま開く。しかしいずれもソフト自体にカラーマネージメント機能はない。CMYKのPDFをiBooksやGoodReaderで開くと、カラーマネージメントされないために、カラーはとんでもないカラーで表示されることがあるのだ。
たとえば、CMYKの「シアン100%」のカラーはどうなるのかというと、
R=0,G=255,B=255
というようなカラーに変換されて表示されてしまう。Japan Color 2001 Coatedからカラーマネージメントして変換すると、AdobeRGBではシアンベタは
R=0,G=159,B=230
で変換される。このRGB色でCMYK値はほぼ近いカラーになるのである。マゼンタをそのままiPhoneやiPadで表示すると、かなり赤い紫色に転んでしまうのである。

↓

つまりiPhoneやiPadではカラーマネージメントされないので、CMYKのPDFは開いてはいけないのである。いやいやカラーが多少転んでもいいのであれば、CMYKのまま開いてもかまわない。しかしPhotoshopやIllustrator、InDesignで確認したCMYKモードで閲覧したカラーは、PDFにしてiBooksやGoodReaderではまったく保証されないのである。
対策は簡単で、カラーをCMYKではなく、さきにRGBに変換してしまうのである。RGBに変換していれば、iPhoneやiPadはRGB値をかなり正確なカラーで表示できるのだ。

iPhoneとiPadでするカラーマッチングは下記でご確認ください。サンプルのファイルをご用意した。サンプルファイルをダウンロードしていただき、Photoshopで開いていただくと、色の違いははっきりとわかります。Firefox上ではいまいちです。
◆これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_epub/
◆これだけでできるInDesignからPDFの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_pdf/
ラベル:iPhone、iPad
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