電子書籍を売りたかったらAKB48を見習え[EPUBセミナー雑記6]



 電子書籍といっても数々のフォーマットが乱立しているが、実は電子書籍でビジネスをする上ではファイルフォーマットは関係ない。配信プラットフォームも関係ない。極端に言うと、売れるコンテンツを持っているかどうかだけである。売れるコンテンツがあれば、どのファイルフォーマットでも売れるからだ。

  売れるコンテンツとは何かというと、簡単に言うと有名なコンテンツである。あるいはブランディングが確立されたコンテンツである。こういうコンテンツは出版するだけで利益を生んだ。有名になった作家やライターの書籍は、電子書籍にしても売れる。紙だからだとか、電子書籍だからということはあまり関係ない。有名だから売れる、話題になっているから売れるだけである。

 こういう放って置いても売れるコンテンツは、これから電子書籍マーケットに参入したいプレイヤーには関係ない。もし、有名な作家の射幸心をくすぐるようなオファーができれば、コンテンツの販売権を得ることは可能かも知れないが、それはなかなか狭き門である。

 世の中にあるコンテンツは、99%は売れないコンテンツである。スタージョンの法則を引き合いに出せば少なくとも

コンテンツの90%はカスである


といえる。ただし、カスではないが、まだ売れる可能性をもったコンテンツも存在するだろう。そういうコンテンツを探してくれば、ビジネスにすることができる。

 既存の出版社でも、これから売れそうなコンテンツを探してきて売る努力をしているが、書籍流通を前提にすると、損益分岐点が極めて高くなる。ISBNコードを取得して流通を通すとなると、数千部は印刷することになる。しかしその数千部を売り切るのは難しい。

 たとえば三千部印刷して千部しか売れない本があると、多分赤字になるだろうが、千部しか売れない書籍でも、千部だけ印刷すれば利益はでるはずだ。ただし出版社は千部程度の書籍は扱いたくないだろう。それでは自費出版と変わらない。出版で赤字にしないためには、印刷した書籍は完売できればよい。つまり売れる数だけ印刷するのである。

 問題はどのコンテンツがどのくらい売れるか誰にもわからないということだ。そこで電子書籍が注目されているわけだ。印刷した書籍に比較すると極めてコストが小さいので、売れるか売れないかわからないものでも、発刊することができる。リスクが小さいので、ミスしても致命傷にはならない

 出版リスクが小さくなったときの問題は、見極めが甘くなり、見切りするタイミングを見失うということだろう。へたをすると発刊点数を競い、プロモーションノウハウに磨きをかけることが疎かになる。電子書籍にすれば、コンテンツビジネスが成立しやすいわけではなく、参入障壁の低さは粗製濫造を招きかねない。障壁の低さと販売ノウハウはトレードオフの関係にある。

 おそらく著名な作家が中抜きして電子書籍を販売しても、電子書籍を売るノウハウは持っていないから、予想した販売数を売ることはできないのではないか。いくら有名でも、紙の書籍を売るのと電子書籍を売るのとではプロモーションの方法は異なる。紙の本は出版社が肩代わりしてくるが、中抜きすると自前でプロモーションするしかない。

 インターネットで手軽にプロモーションするには、ブログを立ち上げ、SNSに書き込み、さらにTwitterにも呟くことになる。ついでにユーチューブにプロモーション用の動画をアップする。まるで売れないグラビアアイドルのような真似を著名な作家がするわけはない(個人差はあると思うが、普通はしたくない)。自前でソーシャルなネットワークを構築するくらいであれば、いっそ出版社に丸投げした方が楽と思うようになるのではないか。

 しかしこれから有名になって一旗揚げたいと思っている人にとっては、ブログを立ち上げ、SNSに書き込み、さらにTwitterにも呟くことは何一つ苦にはならないだろう。今は売れないコンテンツを持っていても、いずれそれを売れるコンテンツにできる考えられる人にとっては、電子書籍は夢のある広き門であるに違いない。

 まず電子書籍をリリースして販売してみる。コストのかからないネットのツールを使ってプロモーションを行うのである。それで売れたら、コンテンツの種類を増やす。そのときにすべての配信プラットフォームと契約すればよい。売れる電子書籍であれば、社会通念上の問題がなければ配信プラットフォームは諸手をあげて受け入れるだろう。そして大化けしそうになったら、紙の本も印刷すればよい。もちろん販売数は限定にする。

 電子書籍のプロモーションのノウハウは、いろいろと試してみるしかない。最初はタダで配ればいいので、EPUBでもPDFでも良い。あるいは両方あってもよい。そのタダの電子書籍から、販売する電子書籍につなげて、売れれば紙も印刷する。さらに売れれば、イベントをすればいいし、ビジネス書だったらコンサルもすればよい

 売り続けるにはソーシャルなネットワークは必須だろう。その組織を維持するにもノウハウは必要だ。それらは個人で賄えるわけではない。そこに印刷会社や中小出版社のビジネスチャンスがあるのではないか。

 電子書籍を売るというのは、最初の入り口手あって、結果的には「人(あるいはキャラクター)」を売るビジネスである。そういう意味では、売れない作家やライターが電子書籍で一旗揚げるには、AKB48をプロデュースした秋元康こそを見習うべきだろう。印刷会社や中小出版社は、電子書籍での秋元康になることを目指すのである。それこそが電子書籍ビジネスの王道ではないだろうか。


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タグ:電子書籍

posted by 上高地 仁 at 14:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | InDesignとEPUB
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