ただのEPUBはそのままでは売り物にならない[EPUBセミナー雑記5]



 電子書籍といっても、大きく分けるとビジネスになるコンテンツとビジネスにならないコンテンツがある。EPUBは明らかにビジネスにならない、つまり儲からないコンテンツのためのフォーマットである。無償でコンテンツを提供するために使われるファイルフォーマットがEPUBなのである。

  EPUBを作成するのは難しくない。いまはまた正体をよくわかっていない人も多いので、EPUBの作成はさもハードルが高そうに見える。しかしHTMLとCSSが読めて、HTMLタグやスタイルシートを直接書いたり編集したりすることが可能であれば、EPUBの電子書籍を作成するのは簡単で、ブログのテンプレートを編集できるのであれば、EPUBの作成は朝飯前になる。

 ただし、HTMLとCSSが皆目わからないということであれば、EPUBの作成のハードルは高くなる。XHTMLのタグをすべて覚える必要はないし、CSS2のプロパティを完全マスターする必要はないが、基本的な仕組みは知っておく必要がある。

 あまりHTMLやCSSを知っていなくても、EPUBを作成する方法としてInDesignからEPUBを書き出す方法をセミナーで解説した。この方法だとInDesignでドキュメントを作成できれば、書き出したEPUBをSigilで編集するだけで、ほぼ予想通りのレイアウトを再現できるからである。

 もっともセミナー参加者に

HTMLの知識が必要なのでしょうか

という意見もいただいた。InDesignユーザー対象でセミナーをしたので、「HTMLはさっぱり」という参加者がいたのは仕方がない。しかしはっきり言って、InDesignを覚えるよりHTMLを覚える方が簡単なので、すこし勉強していただければすぐに身に付くはずである。XHTMLのタグのプロパティがどのスタイルシートを指定しているのかということさえわかれば、スタイルシートの編集もあっという間に理解できるはずである。

 InDesignが便利なのは、段落スタイル毎にスタイルシートを書き分けてくれるということである。CS4以降はオーバーライドも書き出すので、スタイルシートの編集にはInDesignのEPUB書きだしは極めて便利なのである。いずれ、「InDesignを使っています」といったとき、「EPUBの書き出しもできる」ということが含まれるようになるに違いない。

 EPUBの作成はWebサイトの作成をしていれば簡単で、DTPユーザーもInDesignがあれば低いハードルを越えれば可能になる。しかし問題は、

そうして作成したEPUBはそのままでは売り物にならない


ということだろう。紙の本は売れないが、より廉価な電子書籍だったら売れるというのは、全く根拠のない幻想である。売れない本は安くしても売れないのが現実ではないか。Kindleブックでも100万部を突破した本は、紙の本がその何十倍も売れている本ではないか。紙の本が売れれば、電子書籍も連れて売れることがあっても、いまのところ、その逆は難しい。

 いまでも電子書籍の方が売れているものもある。しかしそれはブームに乗って電子書籍が話題になっているからであって、一般論として「電子書籍の方が売れる」と言えるようになるまでにはまだまだ時間がかかる。いくら時代の流れが急激でも少なくとも数年は必要だ。

 電子書籍を紙の書籍より先に発行するメリットは、コストをかけずに売れるかどうかを知ることが可能になるいうことだ。わかりやすく言うとEPUBの電子書籍は

テストマーケティング

しやすいメディアなのである。とりわけEPUBは作成コストがかからない。タイトル型のアプリだと自作するのであればともかく、誰かに依頼するとなるとそれなりの費用が発生するが、EPUBでは自作も可能だし、誰かに依頼してもコストはそれほどかからない

 コストをかけずにEPUBを配布すれば、コンテンツが売れるかどうかを調べることができる。あるいはプロモーションの方法をいろいろ試して売り込むことができる。コスト負担が小さければ電子書籍を知って貰うための取り組みがいろいろ可能になる。それで売れるようになれば、アマゾンでもアップルでもタイトル型アプリでもいいから別の電子書籍を販売したり、印刷した紙の書籍を販売すればよい

 いくら本の中身が良くても、その中身を知って貰わなければお金を出して貰うことはできない。まず知って貰うにはどうすればいいのかというと、無償もしくは廉価でサンプルを配布するのがもっと近道ではないか。配布したサンプルをどのようにしてダウンロードして貰い、実際の購買に繋げるのかが、電子書籍の焦点になってくるだろう。そして配布したサンプルのリストの収集こそが、電子書籍ビジネスが既存の書籍流通とは大いに異なる点なのである。

 電子書籍は書店の店頭のように、売れ筋を平積みしてくれるわけではない。売れ筋は自ら演出する努力が必要だ。その方法は出版社も中抜きする作家も印刷会社も同じ立ち位置にいる。コストをかけずに「立ち読み」サンプル(できれば無償の)を普及させることが、電子書籍ビジネスの第一歩ではないか。その第一歩にもっとも近い位置にいるのがEPUBフォーマットの電子書籍なのである。


◆これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_epub/


◆これだけでできるInDesignからPDFの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_pdf/

 

 


タグ:InDesign,EPUB

posted by 上高地 仁 at 22:36 | Comment(0) | TrackBack(1) | InDesignとEPUB
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Weblog: つき指の読書日記by大月清司
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Illustrator使いこなしの鉄則

  鉄則01:異なるバージョンでは開かない
  鉄則02:最新版にアップデートしよう 8.0〜9.0
  鉄則03:最新版にアップデートしよう 10.0〜CS2
  鉄則04:カラーマネージメント機能を使おう
  鉄則05:貼り込まれた画像のカラーはどうなる?
  鉄則06:透明効果の分割・統合をベクトル側で変換する
  鉄則07:透明分割とスポットカラーの怪しい関係
  鉄則08:ラスタライズ効果設定は「200 ppi」に設定する
  鉄則09:Illustrator CS以降で使うOpenType機能
  鉄則10:フォントはアウトライン化してPDF保存する
  鉄則11:PDF保存ではフチククリ文字はアウトライン化しない
  鉄則12:用紙サイズを大きくしてトリムマークを付けて保存する
  鉄則13:PDFのバージョンはAcrobat 4.0互換で保存する
  鉄則14:PDF保存ではIllustrator編集機能はオフにする
  鉄則15:RGBのEPS画像はそのままCMYKに変換される
  鉄則16:PDF保存ではICCプロファイルは埋め込まない
  鉄則17:Illustrator 10までは画像はダウンサンプルしない
  番外編1:可能な場合オーバープリントを保持とは
  番外編2:インテリジェンスなカラー変換
  番外編3:書き出されるPDFサイズ
  『Illustrator&InDesign使いこなしの鉄則』を発行します
 
Illustrator使いこなしの鉄則が改訂してiPhoneアプリになりました。

カラーマネージメント出力

  カラーマネージメント出力の不思議1〜InDesign編〜
  カラーマネージメント出力の不思議2〜Illustrator編〜
  カラーマネージメント出力の不思議3〜解答編〜

Vistaフォント、混乱の真犯人は誰だ

  その1:包摂はどこまで本当か
  その2:解き放たれた文字数の制限
  その3:JISの包摂に明確な基準はあるか
  その4:使われている文字は字形であっても拒否するのは非現実的だ
  その5:ユニコードは字形を追加するためにあるのだ

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