EPUBは縦組み横組み自由自在なのだ[EPUBセミナー雑記4]



 日本語環境のEPUBは、まだまだ課題が多い。とりわけ遅れているのは、文字組版、ルビ、縦組みである。もともと欧文処理の仕組みだし、簡単に言うとEPUBは所詮Webサイトをパッケージ化したものだから、文字組版、ルビ、縦組みが苦手なのは仕方がない。

  EPUBの縦組みは日本電子出版協会(JEPA)が、次期のEPUBに日本語要求仕様案を提出して、日本語の複雑な組版処理と縦組みの表示を反映させようという動きがある。JEPAにはIDPF会員企業が含まれているためである。

 現在のEPUBビューワーで横組み表示したときにもっとも欠けているのは、行揃えである。iBooksやStanzaは一応行末や行頭の禁則を行なう。ただし、原則的に追い出しのみのようで、文字を追い出すと行末に空白が生じる。また、日本語中に欧文が含まれると、行末は乱れるようだ。行末のジャスティファイができれば、横組みに関しては現在のバージョンでもそこそこの文字組みになる。Webブラウザーでも、行揃えは可能なものはあるので技術的には難しくないはず。

 JEPAの日本語拡張仕様案には、

・縦書き文書中の横書き(柱、ノンブル等)

というちょっと理解しがたいものがある。EPUBの中で縦組みと横組みを混在させたいという趣旨らしい。ということは、縦組みと横組みでXHTMLタグを別々にしろ、と言う意味に他ならない。段落タグは横組み用の段落タグと縦組用の段落タグを別にするという提案である。

 EPUBで読むのに何故、柱やノンブルが必要なのかはよく理解できないが、おそらく制作者側の意図するレイアウトをEPUBでも反映させたいということだろう。紙の書籍にある柱やノンブルを、EPUBでも同じように再現することに価値があると思っているとしか考えられない。

 しかし紙のレイアウトをそのまま反映するのであれは、PDFにすればよい。デバイスのモニタサイズに合わせてPDFを作成して、PDFとして配布するか、PDFを取り込んでアプリにすればよいではないかと思ってしまう。

 InDesignやIllustratorでは文字組み機能のことを、「文字組みエンジン」という言い方をする。InDesign上のテキストフレームにあるものは何も処理されてないプレーンテキストであって、InDesignが内部の設定にあわせて文字組み処理を行い、モニタやプリンタに出力しているわけだ。

 たとえばEPUBビューワーに、もしInDesignの文字組みエンジンを搭載したしよう。それだと表示が遅くなるだろ、という突っ込みはなしにして、InDesignのプリセット設定をそのまま表示に使えば、文字組みは縦組みでも横組みでもまず問題なく表示できる。

 もちろん日本語組版特有のややこしい設定は難しい。圏点とか割り注はいまのところムリだろう。縦中横を個別に指定するには、ルビと同じようにXHTMLのタグが必要になりそうだ。スモールキャップス、下線、上線、打ち消し線はCSSで対応可能なので、ビューワーに実装されていれば表示できるはずだ。

 EPUB日本語要求仕様案の趣旨は、1つにはテキストを強制的に縦組みで読ませたいということかあるのではないか。どうしてもEPUB内で縦組みの指定を行い、どのようなビューワーで開いても縦組みで開かせたいという意図だろう。電子書籍のテキストを縦組みで読むのか、それとも横組みで読むのかということは、読み手の自由ではないか。強制的に縦組みで読ませようとするのはいかがなものか、と思ってしまう。

 必ずしも縦組み用のタグは要らないように思う。たとえば縦組み中の欧文回転(「縦書き文章中の欧文処理」がそれ?)も、全角欧文と半角欧文を切り分けて、それぞれで欧文回転させる設定がビューワーにあれば使い分けることは可能だろう。タグにしないといけないのは、縦中横くらいではないか。

 日本語EPUBを縦組みで読むのか、あるいは横組みで読むのかということは、ビューワーで決める方がいいように思う。EPUBの言語指定が日本語だったら、最初に縦組みか横組みかを選択するようにする。あとはビューワーの機能で表示すればよい。複数のビューワーが登場すれば、競争になってビューワーが淘汰され出来のいいビューワーが残ればよいではないか。

 いずれにしても、EPUB仕様拡張派とビューワー実装推進派が独自にEPUBを変革していきそうである。仕様を決めても、すべてのビューワーがそれを杓子定規に守るわけはない。アップルのように勝手にHTML5のビデオタグを追加してしまっても、誰も文句が言えないように、EPUBの仕様とビューワーの機能が混沌としたまま、時が来れば適当な着地点を見つけることになりそうである。


◆EPUB日本語要求仕様案(解説)[日本電子出版協会]
http://www.jepa.or.jp/press_release/epub_jp_pressrelease.html


◆これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_epub/


◆これだけでできるInDesignからPDFの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_pdf/

 
 


タグ:InDesign

posted by 上高地 仁 at 22:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | InDesignとEPUB
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック





Illustrator使いこなしの鉄則

  鉄則01:異なるバージョンでは開かない
  鉄則02:最新版にアップデートしよう 8.0〜9.0
  鉄則03:最新版にアップデートしよう 10.0〜CS2
  鉄則04:カラーマネージメント機能を使おう
  鉄則05:貼り込まれた画像のカラーはどうなる?
  鉄則06:透明効果の分割・統合をベクトル側で変換する
  鉄則07:透明分割とスポットカラーの怪しい関係
  鉄則08:ラスタライズ効果設定は「200 ppi」に設定する
  鉄則09:Illustrator CS以降で使うOpenType機能
  鉄則10:フォントはアウトライン化してPDF保存する
  鉄則11:PDF保存ではフチククリ文字はアウトライン化しない
  鉄則12:用紙サイズを大きくしてトリムマークを付けて保存する
  鉄則13:PDFのバージョンはAcrobat 4.0互換で保存する
  鉄則14:PDF保存ではIllustrator編集機能はオフにする
  鉄則15:RGBのEPS画像はそのままCMYKに変換される
  鉄則16:PDF保存ではICCプロファイルは埋め込まない
  鉄則17:Illustrator 10までは画像はダウンサンプルしない
  番外編1:可能な場合オーバープリントを保持とは
  番外編2:インテリジェンスなカラー変換
  番外編3:書き出されるPDFサイズ
  『Illustrator&InDesign使いこなしの鉄則』を発行します
 
Illustrator使いこなしの鉄則が改訂してiPhoneアプリになりました。

カラーマネージメント出力

  カラーマネージメント出力の不思議1〜InDesign編〜
  カラーマネージメント出力の不思議2〜Illustrator編〜
  カラーマネージメント出力の不思議3〜解答編〜

Vistaフォント、混乱の真犯人は誰だ

  その1:包摂はどこまで本当か
  その2:解き放たれた文字数の制限
  その3:JISの包摂に明確な基準はあるか
  その4:使われている文字は字形であっても拒否するのは非現実的だ
  その5:ユニコードは字形を追加するためにあるのだ

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。