主流はやはりInDesign CS3だった[EPUBセミナー雑記2]



 InDesignからのEPUB書きだしノウハウをまとめるに当たっての、最大のポイントは「InDesign CS3」からの書き出しだった。実際にはCS3からのEPUBは使い物になりそうもないが、だからこそCS3のEPUBが使い物になるようなノウハウを見つけたいと思ったのである。

  CS3のEPUB書き出し機能は、お世辞にも褒めることはできない。本来であれば参考出品と程度の機能しか持ち合わせていない代物だろう。たとえば、ファイル情報はEPUBのメタ情報として書き出すことができるが、EPUBのビューワーで開くと文字化けしてしまう。

 EPUBはユニコードで記述されているが、InDesignのファイル情報部分のテキストはユニコードではないに違いない。おそらくシフトJISのまま記述されていて、文字コードを変換せずEPUBに書き出していると考えられる。EPUBのユニコードはUTF-8。欧文ASCIIコードの場合は、そのままの文字コードを反映するのでコード変換不要。そのため日本語のようなダブルバイトの文字コード部分については検証をしていないと考えられる。

 ただそうはいっても、CS3がリリースされた頃はEPUBに注目するユーザーはほとんどいなかったはずだ。むしろ、2007年の前半に発売されたInDesignにEPUB書き出しの機能を用意した先見性こそ驚くべきかもしれない。

 惜しむらくは、日本語環境で検証した様子がほとんど見受けられないということだろう。ファイル名の文字化けだけでなく、段落スタイルをスタイルシートに書き出す方法は異様なほど複雑怪奇である。フォントサイズ書き出しの「バグ」ともいえる仕様は、CS5に至っても訂正されていないので、ベータテストでも誰一人として調べられなかったに違いない。

 ファイル情報の文字化けはCS4では修正されたが、CS4でもXHTMLファイルの言語指定はされなかったので、フォントを埋め込まないと文字化けすることになった。フォントを埋め込んでいると、とりあえずEPUB内のフォントを読みに行くが、埋め込んでいないとOS内のフォントを読みにいく。そのとき言語指定がないので欧文フォントを割り当てるのだろう。欧文部分は文字化けしないので、テキストがすべて欧文であれば、文字化けはしないのである。

 CS5ではXHTMLの見出しタグや段落タグ内に言語指定を追加した。一般的にEPUBに日本語指定する場合は、HTMLタグ内にするが、CS5ではテキストタグすべてに言語指定を行っている。テキストをコピーしても日本語指定が保持されるためだろうか。

 CS5になってInDesignからのEPUB書き出しは、かなりブラッシュアップしてきた。フォントサイズ書き出しの「バグ」あたりを除けば、そのまま使えないことはない。フォントを埋め込まなくても、日本語が表示できるようになったからである。

 セミナーの参加者からは

この時期だったらCS4にしぼって説明して欲しい

というご意見をいただいた。その意見は間違っていない。常識的にいえば、今の時期だったらCS4のユーザーがもっと多いという予想は妥当だろう。実はセミナーをする立場で言えば、CS4にしぼって解説するほうがやりやすいのである。他のバージョンは違いをさらりと流せば、検証も少なくてすむ。

 セミナーの最初に参加された方に、メインのバージョンを聞いてみた。そうすると、やはり半数以上の方はいまだに

InDesign CS3


を使っているのであった。CS3が多いのは、Adobeのアップグレードポリシーの変更で、Mac OS 9からの移行する場合、CS3へのアップグレードが最後の切符だったからだろう。CS4以降だとMac OS 9環境からはアップグレードできず、製品版を買うしかないからである。

 CS3のユーザーがすぐさまCS4やCS5に移行する必要はない。残念ながら新機能の多くは十分条件であっても必要条件ではない。アップグレードポリシー制限いっぱいまで待ってから移行しても遅くはない。さらに言えば、アップグレードするとマシンの買い換えも必要になるケースも少なくない。アップグレードは慎重にならざるを得ないのである。

 今回はCS3でもEPUBを書き出して、使い物になる電子書籍を作成する方法を確実に解説したいと思ったのは、CS3からアップグレードしていないユーザーが少なくないと思ったからである。そして実際に参加された方もCS3を利用しているユーザーが大半だった。

 InDesign CS3そCS4以降でEPUB書きだしで大きな違いがあるのは、オーバーライドの書き出しである。CS4以降では段落スタイル上のオーバーライド指定をスタイルシートとして書き出すことができる。つまり、段落スタイルを適用したテキストの一部分を変更しても、EPUBに反映することが可能なのである。それ以外は言語指定を除けばあまり大きな違いはない。

 InDesign CS3のユーザーであっても、もしInDesignでテキスト主体の書籍を作成しているのであれば、一度EPUB書き出しを試して欲しい。あとはSigilで編集すれば立派な電子書籍が完成する。Sigilでの編集では多少のHTMLとCSSの素養は必要だが、EPUBの仕上げにSigilを使うのであれば、それほどハードルは高くないと思うのである。


◆これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_epub/


◆これだけでできるInDesignからPDFの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_pdf/

 


 


タグ:InDesign,EPUB

posted by 上高地 仁 at 11:41 | Comment(0) | TrackBack(1) | InDesignとEPUB
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