文学同人誌のフリーマット「第10回文学フリマ」では、すでに電子書籍で販売している。タイトルにあるように、5時間トータルで1400部以上が販売された。文学同人誌なので文字主体。図版などはほとんどないので、電子書籍化は容易だ。
1400部といっても、電子書籍部のブースで販売されていた15種類の本の総計。購入者数は168人なので、一人あたりにすると8冊くらいを購入したことになる。したがって、単価は安く、まとめ買いでの冊数もふくまれている。1冊は100円とか200円とかの価格なので、1400冊の総売上は
20万円位
ということだろう。記事には売り上げは掲載されていなかったが、1400部×10円プラスαというところか。
同人誌に掲載されている小説や評論は、評価が定まっていないものが大半。よく言えば玉石混淆。試し読みするにはコストがかからないほうがいい。電子書籍はうってつけだろう。100円とか200円とかであれば、「しまった」と思っても惜しくはない。
さすがに立命館大学映像学部教授が仕掛けるだけあって、電子書籍は工夫されている。
大きい文字のPDF版
小さい文字のPDF版
EPUB
の3種類である。EPUBはいまのところ縦組みはできないので、文学作品としては縦組みを手軽に再現できるPDFも採用するしかないということだろう。当分は販売用の電子書籍はPDF版とEPUB版の両方を提供するのが順当だろう。
なお、記事の中では触れられていないが、ここで販売されてる電子書籍にはDRMなどというやぼったいものは使われていない(と思われる)。電子書籍の最初の第一歩ではセキュリティは不要であり、むしろ制限をかけないという自由さこそを強調して「売り物」にするべきだろう。
15種類の本を印刷すると、20万円どころではないコストがかかる。しかし電子書籍であれば制作コストのみ。外注費はかからない。書籍にすると印刷コストや在庫コストだけでなく、売れ残りを気に病むストレスコストもかかる。電子書籍ではそれらは一切不要で、売り上げのほとんどは粗利になる。これほどリスクの小さいものはない。フリマで販売した後も、ネットで販売することは可能だ(もっとネットでは決済がネック。100円のものは既成の決済システムでは難しい)。
ただしそうはいっても、同人誌は自己満足で発行している場合も多い。本にして販売したいという作者はまだまだ多いのではないか。当分は同人誌作者の葛藤が続きそうである。電子書籍で販売して好評だったら印刷した本も売る方法も必要だろう。そうなると、購入者のリストは欠かせない。
アメリカでは書籍の販売タイトルが50万位あり、そのうち30万タイトルが自費出版だそうである(『電子書籍の基本からカラクリまでわかる本/羊泉社MOOK/92ページ』)。自費出版の比率が高まっていて、アマゾンでのKindleの影響が大きいらしい。自費出版の電子書籍を安く売っても、それ以外の普通の価格で販売している電子書籍や印刷した本がバックエンドで売れるという。
日本でもこれから電子書籍での自費出版の比率は高まっていくのではないだろうか。コストをかけずに電子書籍を発行できれば、書籍を発行したい人は決して少なくないはずである。電子書籍用のPDFやEPUBを作成して低額でも決済するサービスは登場するに違いない。
そういえば、全世界で2000万部以上売ったというロバート・キヨサキの『金持ち父さん、貧乏父さん』も最初は自費出版だったという。『金持ち父さん、貧乏父さん』を夢見て、電子書籍はマイブーム化を突き破って広がっていきそうである。
◆5時間で1400部以上売れた電子書籍
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100702/215253/
◆電子書籍をフリマで対面販売する「電書部」が目指すものとは
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1007/07/news007.html
◆電子書籍の基本からカラクリまでわかる本 (羊泉社MOOK)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862485707/incunabucojp-22
◆これだけでできるInDesignからEPUBの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_epub/
◆これだけでできるInDesignからPDFの電子書籍を作る方法
http://www.incunabula.co.jp/book/id_pdf/
ラベル:ePub
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