ネットで見つけたiPadの批判記事に次のようなものがあった。「僕がiPadを返品した理由」と「iPadはとても残念なプロダクト」というブログの記事である。いずれもタイトルに「返品」とか「残念」とかいうダークワードが含まれていて、惹起効果は極めて高い。タイトルだけで思わずページを開いてしまう。
「iPadはとても残念なプロダクト」はiPhoneのTwitter経由で読んでいた。本文を読んだ後、コメントを読んだ。コメントは五百以上もある。コメントを読んでいると、この記事は「ネタ」であると書かれているではないか。どうやら、記事の内容はすべて「ウソ」らしいのだ。
そう思ってトップページをもう一度見ると、自己紹介の下に小さな文字で
※当ブログはフィクションであり、登場人物その他全ては架空のものです。
(要するに全部ネタと言うことです)
と記載されていた(「ネタ」の文字だけが何故か半角カタカナ)。しかしタイトルバーの下や、記事直下に記載されていれば読むかも知れないが、サイドバーの隅に小さく書かれていれば、大半の読者は見落とすに違いない。とりわけiPhoneでよんでいると、サイドバーの小さな文字はまず読まない。見落とすことを想定して、iPadの批判記事を書いているわけである。ということは、某米系投資銀行勤務しているという藤沢数希氏は、
愉快犯
ということだろう。もちろん、アドセンスやアマゾンのリンクは張ってあるので、アフィリエイト狙いの記事かもしれない。あるいは「また、僕のツイッターには2万人のフォロワーがいて」とリンクしているので、Twitterのフォロワーをさらに増やしたいのだろう。
記事内の指摘は、あまり的を得たものとは思えない。たとえば、
iTunesがインストールされたPCが必要だとは思わなかった
無線LANのパスワードを忘れて設定に時間がかかった
AdobeのFlashが表示されない
というような指摘なのである。初心者のような文体で書かれていて、同意を求めている。しかしこれらは反感を誘うように、わざとレベル低いネタを取り上げている。だれでもが突っ込みたくなるような「スキ」なのである。つまり、コメントを誘っているだ。
もう1つの記事は、アメリカの記者が書いたものを翻訳したもの。簡単にいうと
iPadにすべての時間を奪われて見失ったものとは...
ということがテーマである。いまさら自分探しをするなよ、と突っ込みたくなるような内容だ。iPadによって自分の時間を自ら放棄し自分自信を見失いつつあったため、iPadを返品することにしたという内容である。しかし今読み返すと、この記事も「ネタ」くさい。本当はiPadを返品していないか、返品していても別の理由ではないか。あるいは記事のために返品したが、すぐに買い戻したとか。おそらく瞬間的に、iPadに埋没しそうな自分に気がついたのだろう。そこで、それをネタに記事を書いた。
iPadに問題がないわけではないだろう。持っているわけではないので具体的にはわからない。ただ、上記の批判記事を読む限り、iPadはiTunesがインストールされたPCを持っていて、無線LANの設定ができて、Flashの非対応に我慢ができて、なおかつ、iPadにのめり込んで自分を見失いさえしなければ、あとは貶すところがない代物らしいということだ。
批判記事を書くのは難しい。「iPadはとても残念なプロダクト」を読んでネタとは知らずにまじめにコメントした人たちは、どう思っているのだろうか。後でネタだと知ったら、どんな気持ちになるのだろうか。「自己紹介に書いてある」と言われても釈然としないだろう。重要事項説明義務違反とか、インフォームド・コンセント不足の誹りは免れないかもしない。
しかし、ネットで目立つには批判記事を書くのがもっとも近道ではないか。批判記事を書いて、なおかつ説得力を持たせることである。反対意見を持っているものに「うぅーむ」と唸らせるものを書ければ、アクセスを集めることができる。文章を上達させるには、嫌われない批判記事を書くのが一番の方法ではないだろうか。
ちなみに「iPadはとても残念なプロダクト」は、さんざんiPadを貶した後、
スティーブ・ジョブズや孫正義は現代の魔法使い
だと絶賛するように褒めている。読者から嫌われないように、iPadではなくジョブズや孫正義を持ち上げて記事を締めているのである。
◆僕がiPadを返品した理由:Why I Returned My iPad - HBR[Long Tail World]
http://longtailworld.blogspot.com/2010/06/ipadwhy-i-returned-my-ipad-hbr.html
◆iPadはとても残念なプロダクト[金融日記]
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51709027.html
ラベル:iPAD
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