2010年03月03日

電子書籍普及へルール作りは必要か

 アメリカでのキンドル(Kindle)の普及に後押しされて、日本でも電子書籍への期待が高まりつつあるようです。総務、経済産業、文部科学の3省が日本国内でのルール作りに乗り出しました。官民合同で研究会を発足させるようです。

  この研究会の目的は

国内ルールを整備
日本企業による電子書籍ビジネスの後押し
中小・零細の出版業者の保護

となっています。おそらく本音は「中小・零細の出版業者の保護」でしょうね。もし急速に電子書籍が普及し、書店で販売している書籍が売れなくなったら大変ですから、研究会を立ち上げて国としては対策をとっているという「姿勢」を見せるという程度でしょう。

 「国内ルールの整備」については

ネット配信する電子書籍のデータ形式
コピー制限
一時的な無料閲覧

をルール化するとしていますが、こういうものを研究会でルール化しても、ほんどと意味がないでしょう。こういうものは最終的にマーケットで決まっていくものです。国が「これがいい」と電子書籍のファイルフォーマットを決めてもユーザーがそっぽを向けば、形骸化するのは確実です。「コピー制限」でも出版社は、電子書籍はコピー制限無しで配布してもリアルの書籍が売れるとなったら、コピーに制限なんかしませんよ。

 だいたいこの研究会が最初から考え違いをしているのは、電子書籍は日本ではもうとっくに普及しているという現実です。Kindle=電子書籍ではありません。日本で普及している電子書籍は

ケータイショウセツ

ですよ。あれだって立派な電子書籍ですね。なんかほんとうに、書籍の形態にこだわりすぎ。

 それぞれの省の官僚たちはそんなことはきっと百も承知なんでしょうが、「中小・零細の出版業者」からの声が大きくなってきたため、研究会を立ち上げることにしたのでしょう。要するに「ガス抜き」というわけ。関係者が集まって議論していく中で、ルール化の意味のないことが理解されていくに違いありません。

 いずれにしても、出版社が書籍を作って流通に流すことが仕事だと思わずにも

コンテンツのマネージメント

をする会社という意識に変わっていかないと、大も中小も先は細っていくしかなさそうです。書籍という形で提供されていた「コンテンツ」を多角的にプロモーションしていく企業に変わっていく必要がありそうです。もし出版社がそうい意識を持っていれば、電子書籍をルール化する研究会なんて役に立つどころが邪魔であることに気がつくと思いますけどね。まあもっもと、再販化のぬるま湯の中でしのぎを削ってこなかった出版社には無理かもしれませんけどね。

 そういう意味では、電子書籍の普及は、出版社以外の企業が出版業に参入するいい機会かもしれません。


◆電子書籍普及へルール作り、流通や著作権研究へ[読売新聞]
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100303-OYT1T00077.htm

◆KindleやiPadで普及が進む電子書籍と印刷書籍は共存できるか[DTP-Sブログ]
http://dtp-s2.seesaa.net/article/140027378.html

ラベル:電子書籍
posted by 上高地 仁 at 12:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース&トピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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