2010年02月25日

Illustrator CS3、特色をLab値で変換する落とし穴

 Illustrator CS3のスウォッチパネルには、特色についてのオプションが追加されている。従来、特色をCMYK変換する方法は、特色が持っているCMYK値で変換していたが、CS3では特色のLab値を変換することができるようになった。つまり、特色もカラーマネージメントしてCMYKに変換可能なのだが、実は落とし穴があった。

  特色はスウォッチライブラリの[カラーブック]というメニューに用意されている。ここで特色をパネルとして呼び出して指定する。指定された特色はスウォッチに反映される。一般的にCMYKで印刷する場合、特色データはCMYKに分解して利用する。

 特色のCMYK変換は、特色に合わせたCMYK値が用意されていて、それでCMYKに変換する。CMYK値はアプリケーションが持っているはずで、Photoshopでもバージョンが異なると、同じ特色をCMYKに変換してもカラー値が異なっていることがある。

 しかし特色は実際には印刷したときの色であり、Lab値として表現することは可能だ。特色のカラーチップを測色すれば、特色のLab値を知ることは簡単である。CS2までは特色に対応したCMYKを持たせていたが、CS3ではCMYK値と合わせてLab値も持つようになった。それがスウォッチパネルのオプションにある[特色]というメニューである。

 [特色]を開くと、[特色オプション]というウィンドウが現れる。ここに

指定されたブックのLab値を使用

という設定があるのだ。この設定をオンにすると、特色にLab値を与えて、ターゲットのCMYKとカラーマネージメントしてCMYKに変換することができる。つまり、同じ特色でもターゲットのCMYK値が異なると、変換されるCMYK値が異なるのである。


スウォッチパネルから[特色...]を開く
100225-01.gif

      ↓

100225-02.gif
*[指定されたブックのLab値を使用]すると、特色がLab値でCMYKに変換可能だ。


 いままでIllustratorは[プロセスブックのCMYK値を使用]していた。そのため、ドキュメントのCMYKがJapan Color 2001 Coatedであっても、Japan Color 2002 Newspaperであっても、同じCMYK値になった。つまり、同じ特色をコート紙用Japan Color 2001 Coatedで変換した場合と、新聞用のJapan Color 2002 Newspaperで変換した場合では、CMYK値は同じなので実際の印刷色は同じものにならないのである

 しかし[指定されたブックのLab値を使用]を指定すると、ターゲットCMYKが異なるとカラーマネージメントしてCMYK変換されるため、CMYK値は異なるが見た目は、より特色に近い色に変換できるのである。CS2には用意されていないので、CS3からの機能である。

 コーポレートカラーやブランドカラーなどが特色で指定されているときは、この機能がおおいに役立つ。もちろん特色の版数の違いまで反映させることはできないが、コート紙と上質紙では印刷したときの見た目のカラーには大きな違いがあり、LabでカラーマネージメントしてCMYK変換した方がより近いカラーになるはずである。

 ところが少し困ったことがあるである。問題は特色をCMYKに変換するときに発生するのだ。特色の変換方法によって、正しいLab値で変換されないことがあるのである。


 ドキュメント内の特色をCMYKに変換する方法はいくつかあるが、一般的に使われている方法は次の2つだろう。

スウォッチオプションでプロセスカラーにする
[カラーの編集]でCMYKにする

 この2つの内で、スウォッチオプションでプロセスカラーに変換すると、Lab値にJapan Color 2001 Coatedのみを割り当てて変換するのである。ドキュメントにJapan Color 2002 Newspaperを割り当てても、Japan Color 2001 Coatedでの変換と同じ結果になるのだ。

 ところが、[カラー編集]にある[CMYKに変換]を使うと、ドキュメントCMYKを認識してカラー変換するのである。つまりCMYK変換の結果が、Japan Color 2001 CoatedのときとJapan Color 2002 Newspaperのときでは、数値が異なるのである。

100225-03.gif

 もっもと実際に印刷して確認したわけではない。しかしPhotoshopでもカラーライブラリで特色を指定し、カラーピッカーに変換するとき、カラー設定の作業用CMYKが異なるとCMYK値が異なり、Illustratorで試した結果とほぼ同じになる。Photoshopと同じように変換されるということは、Illustratorでも正しく特色がLab値で変換されていると考えてよいだろう。

 カラーマネージメントの仕組みが理解できていれば、Illustrator上の特色をCMYKに変換する場合は、[指定されたブックのLab値を使用]するほうがより適切なCMYK値に変換できるのである。


 
ラベル:Illustrator CS3
posted by 上高地 仁 at 22:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | Illustratorトピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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