原因はWindowsのGDIが飾り罫線を画像データに変換してしまうことにある。もともとGDIはモニタ表示用の処理系であったが、プリンタからの出力にも流用された。MacintoshのQuickDrawと同じようなものである。低解像度のプリンタからの出力には配慮されていても、高解像度の出力でも同じように処理を行う。プリンタドライバ解像度が高ければ、高いまま画像化するのである。
プリンタから出力する場合は、解像度が高くてもプリントアウトできないわけではないが、飾り罫線では画像化するだけでなく、1ドットの画像を並べて線のように見せるので、高解像度であれば使い物にならない。2400 dpiで出力しても1ドットであり、その場合はフィルムやCTPに出力されても、ブランケットに転写されて印刷されることはまずない。1200 dpiだとかろうじて見えるだろうが、それもベタ場合であり、かけ合わせではどうにもならない。
実は破線などの罫線も画像化されるが、1ドットにはならないので、それなりに見える。しかし飾り罫線は、印刷したときに失われてしまうので、トラブルの原因になってしまう。
飾り罫線をPDF化する問題は他にもある。もう一つのトラブルの原因は、Distillerでのダウンサンプルである。Distillerにある印刷用の設定では「プレス品質」「高品質印刷」「PDF/X-1a:2001(日本)」にしても、画像はダウンサンプルされてしまう。Windows 2000とXPでは画像化される飾り罫線はRGB画像だからである。プリンタドライバの解像度が600 dpiであっても、飾り罫線はダウンサンプルされてしまいボケた画像に変換されてしまうのである。
Windows 98ではカラー画像ではなく、モノクロ二値の画像マスクになる。つまり、罫線を画像でマスキングするのである。そのためダウンサンプルは、カラー画像ではモノクロ二階調のダウンサンプルしきい値の制限を受ける。1200 dpiではダウンサンプルされず、2400 dpi以上を指定したときダウンサンプルされて、PDFに表示されなくなる。
Windows環境で飾り罫線を使った場合、
Windowsのバージョン
プリンタドライバの解像度
Distillerのダウンサンプルしきい値
の三つの要因を考慮しなくてはならない。そういう飾り罫線を調べるプリフライトを作成するのは簡単ではない。画像化される飾り罫線は、場合によっては小さな画像に分割されることがあり、飾り罫線以外でも、オブジェクトが画像になり分割されることがあるからだ。
ただし調べる対象を絞り込めばよい。プリフライトチェックを個別に作成するのである。
Windows 98での1200 dpi以上
Windows 2000/XPでの600 dpi以上(ダウンサンプルオン)
Windows 2000/XPでの1200 dpi以上(ダウンサンプルオフ)

*Windows2000から書き出し、Distillerのカラー画像のダウンサンプルを「300 ppi」で書き出した場合の設定。Windows2000では飾り罫線は小さな画像に分割され、「300 ppi」と「350 ppi」では分割される画像の大きさが異なるので別々に調べる必要がある。
Distillerの設定はデフォルトではダウンサンプルされているが、印刷用ではオフになっていることもあるので、ダウンサンプルをオフにした場合も調べておきたい。ダウンサンプルをオフにしても、1200 dpi以上は実質的には印刷できても使い物にならない。
なお、Wordの飾り罫線でトラブルを発生させない一番の方法はDistillerを使わないことである。「いきなりPDF2」以降ではデフォルトのプリンタドライバの解像度は300 dpiになっていて、画像化された飾り罫線がダウンサンプルされることはないからだ。といっても、入稿されたWordからのPDFでは、Distillerが使われない可能性は低い。プリフライトで調べるしかなそさうである。
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ラベル:Wordの飾り罫線