飾り罫線が印刷で使い物にならない原因の一つは、GDIがDistillerに罫線データを提供するとき、罫線を画像にしてしまうことがある。普通の罫線は画像化されないのだが、破線や飾り罫線は画像になるのである。それがDistillerでPDFにすると、困ったことが起きる。困ったことというのは、Distillerで「プレス品質」とか「高品質」などの印刷用設定を使って変換すると、罫線が
ダウンサンプル
されてしまうのである。ダウンサンプルされると、飾り罫線を構成する細い線が濃度を失い、印刷してもインクが乗らないか、あるいはぼけた線として印刷されてしまうのである。
Wordで飾り罫線を使うことはあまりないかも知れないが、もし使用していた場合、プリンタでは印刷されたのに、オフセット印刷では印刷されずにクレームになってしまうことになる。
Acrobatのプリフライトで飾り罫線をリストできれば、印刷事故を減らすことができる。プリフライトで調べるには、飾り罫線をPDFにして、画像化された罫線部分の特徴をしらべるしかない。
しかし、困ったことに、一つのプリフライトで全ての問題となる飾り罫線をリストすることはできそうもない。というのは、飾り罫線はDistillerでダウンサンプルしなくても、画像の解像度が高いとき、印刷されないデータになってしまうからである。
たとえば、「2400 dpi」で書き出せば、GDIはその1ドットで飾り罫線を作成する。低解像度のプリンタであればそれでもいいが、「2400 dpi」の1ドットはCTPでは出力できても、印刷すると消失してしまう。ブランケットから印刷用紙に転写することはできないし、もしできたとしても、視認できないほど小さな点になってしまう。こういう場合は、解像度を下げて作り直すしかない。
さらにやっかいなのは、Windows 98と2000以降は罫線の画像化の仕組みが同じではない。墨の飾り罫線を作成すると、Windows 98では「デバイスRGB」で作成されるが、Windows 2000やXPでは「インデックス付きデバイスRGB」という正体不明のカラースペースになってしまう。
Windows 2000やXPでDistillerでPDFにすると、飾り罫線部分を[出力プレビュー]のオブジェクトインスペクタでクリックすると、「インデックス付きデバイスRGB」と表示されてしまう。
したがって、飾り罫線をプリフライトで調べるためには
ダウンサンプルの有無
Windows 98と2000以降
ダウンサンプルされておらず「1200 dpi」以上
を別々にリストしなければならないというのが、飾り罫線を調べていく上で達した結論であった。「Windows 98と2000以降」は必ずしも分けなくてもかまわないが、WordからのPDFではWindowsのバージョンはわからないので、別々にリストすることにした。
飾り罫線をピックアップする方法は、画像の属性にある。最初は書き出される画像サイズに共通性があったので、これで「決まり」と思ったが、残念なことにプリフライトには画像の実寸法を調べるプロパティはなかった。なぜ含まれていないかはわからないが、それ以外のプロパティを使うしかない。
上はWindows 98で作成した罫線で、下はXPで作成した飾り罫線の属性。同じ解像度なのに「幅/高さ」が異なっていることがわかる。こういう違っている部分を手かがりにして、プリフライトのカスタムチェックを作成するしかない。「幅/高さ」は違っても「サイズ」は同じ数値になっている。
最終的に五つのカスタムチェックを作成して、Distillerで作成した飾り罫線を調べることができた。飾り罫線はを使うときは「いきなりPDF2」以降を使うと、まずトラブルにならない。が、それを客先に求めるのは無理だろう。
ラベル:Acrobat 9 Pro
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